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On the Production
by 井口健二
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■剣の舞 我が心の旋律、悪人伝、ディヴァイン・フューリー 使者、タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング
を襲った悪霊との壮大な対決を期待したいものだ。
儒教の国とされる韓国は、その一方でキリスト教が隠然とし
た勢力を持つとも言われているものだが、そういう国からこ
ういう作品が紹介されるとそれなりに構えてみてしまう感じ
はある。
しかし本作は、一部のアメリカ映画のようなキリスト教を絶
対視しているものではなく、それでいながらキリスト教への
敬虔な思いも描かれて、これはこれでバランスの良い作品に
仕上げられていた。
スタイリッシュな映像や荘厳な音楽も巧みな作品だ。
公開は8月14日より、東京はシネマート新宿他にて全国ロー
ドショウとなる。
『タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング』
“Touch Me Not”
2018年に開催された第68回ベルリン国際映画祭で最高賞の金
熊賞に輝いたものの、同賞史上最大の問題作とされ、日本で
はR18+指定で公開になる作品。
映画の始まりは男娼の裸体を鑑賞する若いとは言えない年代
の女性。彼女はそれ以上の行為は要求しない。実は彼女は他
人に触れられるのを嫌う精神的な障碍者だった。そんな彼女
が寝たきりの父親を見舞った病院である光景を目にする。
それは障碍者同士がコンビを組むグループセラピーの現場。
そこで無毛症の男性と四肢が麻痺した重度の障碍者とのやり
取りを観ていた彼女は、ふと気になって無毛症の男性の後を
つけるが…。
その他にもトランスジェンダーの娼婦や、様々な障碍者との
交流の中で、彼女の心の問題が徐々に解かれて行く。
脚本と監督はルーマニア出身のアディナ・ピンティエリ。以
前にはルーマニアの精神病院に取材した作品も発表している
女流ドキュメンタリー監督の初ドラマ作品となっている。
出演は、1989年『お家に帰りたい』で主人公の生き別れの娘
に扮していたローラ・ベンスンと、2014年『ラストミッショ
ン』や2016年『X-MEN:アポカリプス』にも出ていたという
トーマス・レマルキス。
2012年12月9日紹介『クラウド・アトラス』などの監督トム
・ティクヴァが委員長を務め、坂本龍一らも加わった審査員
がどういう基準で本作を選んだかは判らないが、問題作とい
う点では誰もが認めるところだろう。
それが障碍者やマイノリティが抱える問題を中心に据えてい
るということでは、審査員が選ぶという点に関しては障害も
少なかったと言えるかもしれない。
しかし障碍者の性行動を描くという点では、日本では2003年
10月紹介『ジョゼと虎と魚たち』や韓国映画でも2004年1月
紹介『Oasis』などが先にある訳で、本作はそこに他のマイ
ノリティの問題も絡めたのが評価なのかな。
ただし本作ではフィクションとドキュメンタリーの交錯とい
うのが、結局どっちつかずな感じで、制作者である監督のス
タンスが曖昧なのは気になった。それが真の障碍者の問題を
興味本位に落としてしまう感じもしてしまった。
ここはやはりもっと正面から向き合うべき作品だったとも思
える。でもそれでは一般の興味を引けないと考えたのなら、
方法論としては正しかったのかもしれないが、僕には物足り
なさが残る作品だった。
なお本作は当初6月6日の公開予定だったが、コロナ禍の影
響で初日が7月4日に延期され、東京は渋谷シアター・イメ
ージフォーラム他で全国順次ロードショウとなる。
(以下に随時追加します。)
05月31日(日)
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