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On the Production
by 井口健二
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■第32回東京国際映画祭<コンペティション以外>
は確かにあったとは思えるが。

『ファイアー・ウィル・カム』“Viendra Le Feu”
山間の村を襲う山火事をクライマックスに、過去に放火の罪
で服役していた男と村人との関係が描かれる。そんな中で男
は村の女性獣医と親しくなるが、それも過去の経緯によって
ギクシャクしたものになって行く。他にも黙って彼を迎え入
れる母親の姿など、いろいろある人間模様は面白いが、それ
らは山火事の凄まじさで飛んでしまうかな。とは言えその描
写は2018年3月紹介『オンリー・ザ・ブレイブ』ほどではな
いし、迎え火を使う消火方法の説明なども前作の方が詳細で
理解し易かった感じがする。しかも本作では結末が曖昧で、
意味もよく判らなかった。因に本作はカンヌ国際映画祭「あ
る視点」部門で審査員賞だそうだ。

<特別招待作品>
『アイリッシュマン』“The Irishman”
全米トラック運転組合(チームスター)の元幹部で、2003年に
死去したフランク・シーランが生前残した告白として2004年
に公表された伝記本に基き、マフィアとケネディ家の関係な
どを描いた上映時間3時間39分のマーティン・スコセッシ監
督作品。シーランをロバート・デ・ニーロが演じ、他にアル
・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル、レイ・
ロマノ、ボビー・カナベイル、アンナ・パキンらが脇を固め
ている。当初はクロージングフィルムに予定されたが諸般の
事情で閉会式での上映は取り止めになり、代わりに特別招待
として上映された。正にアメリカ政界の裏面史といった感じ
で、特にエピソードとして描かれる大統領と司法長官のケネ
ディ兄弟の素顔は、英雄伝説をぶち破る作品とも言えるもの
だ。60年近くに亙る物語だが、主な登場人物を同じ俳優が演
じているのも驚嘆すべき作品だった。なお本作はNetflixの
作品だが、11月27日からの配信に先だつ11月15日より、一部
劇場にて公開される。
        *         *
 以上、今回のコンペティション以外の鑑賞は11本。今年は
会期も1日短かったので、ほぼ昨年と同水準で観られた感じ
かな。なお上記の内で、『i−新聞記者ドキュメント−』が
日本映画スプラッシュ部門の作品賞、『夏の夜の騎士』がア
ジアの未来部門の作品賞を受賞している。この点は効率が良
かったと言えそうだ。
 また今回は上記の作品以外にもホラー/ファンタシー系の
作品が多く、スケジュールの関係で観切れなかったのだが、
これは以前に映画祭に併催されて、今年「シン・ファンタ」
として一夜だけ復活した東京ファンタスティック映画祭の再
開に向けた布石かなとも勘ぐったところだ。
 それは夢かもしれないけれど、来年以降の映画祭には期待
したい。

11月07日(木)
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