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On the Production
by 井口健二
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■見えない目撃者(セカイイチオイシイ、聖なる泉の少女、人間失格、典座、カーマインSTギター、HiGH&LOW THE WORST、サウナ、サタンタンゴ)
フォーカス部門の出品作が一般公開されることになり、改め
て試写を鑑賞した。この作品も見直しとプレス資料で理解が
深まったが、実は映画祭で観たときには、音楽ドキュメンタ
リーの割には映画監督ジム・ジャームッシュのシーンが少し
長目に感じて、有名監督の登場では仕方ないかな?何て思っ
ていた。ところがこの店が今のような手作りギターを始めた
のは、映画監督が改築時の廃材を持ち込んで依頼したのが始
まりだったのだそうで、それならこの構成は正しいものだ。
因にジャームッシュ自身も自作品のサウンドトラックを手掛
けるほどのミュージシャンでもある。その他にも作品には、
名だたるバンドのギタリストたちが次々に登場して、彼らが
惜しげもなく演奏を披露するシーンは、音楽ファンにはたま
らない作品と言えそうだ。公開は8月10日より、東京は新宿
シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『HiGH&LOW THE WORST』
(2017年10月29日題名紹介『HiGH&LOW』と、2007年〜14年に
映画化『クローズ』の続編で煖エヒロシ原作の『WORST』が
クロスオーヴァした作品。主な舞台となるのはSWORD地区の
鬼邪高校。元々全日制の生徒と定時制の生徒との間では抗争
があったが、現在は定時制の番長が全体の頭を張っている。
そんな学校の全日制に転入生がやってくる。彼は近隣の団地
出身で幼馴染みには様々なメムバーが揃っており、彼は全体
の頭を取ると宣言する。しかし幼馴染みの1人に違法薬との
関係が疑われ、さらに隣町・戸亜留市にある鳳仙学園との間
で不穏な空気が流れ始める。脚本は煖エと『HiGH&LOW』の脚
本チームが合作したもので、煖エにとっては初の映画脚本だ
そうだ。まあ元々がどちらも似たような話だから、それを剽
窃などと言わずにうまく収めたのは素晴らしいことだ。出演
は『HiGH&LOW』のメムバーに川村壱馬、志尊淳、白洲迅らが
加わっている。公開は10月4日より、全国ロードショウ。)

『サウナのあるところ』“Miesten vuoro”
(フィンランド・日本の外交樹立100周年を記念して公開さ
れる同国発祥の入浴設備について語るドキュメンタリー。と
言ってもその歴史などが語られるのではなく、同国では日常
的にあるとされる公衆サウナを舞台に、そこで過ごす主に男
性たちの人生を語る言葉が収録されている。それにしても野
原に建つ孤立のサウナや、公衆電話ボックスを改造したので
はないかと思われる1人用サウナなど、日本では考えられな
いようなものもいろいろ登場する。しかしながら、中で語ら
れる男性たちの人生は、戦争などの要素はあるもののさほど
特徴的でもなく、サウナに特化される話も0ではないが取り
立てて言うほどのものでもない。恐らく彼の地ではサウナが
普遍的過ぎてこんな風にしか描けなかったのだろうけど、個
人的にはプレス資料にあった日本人研究者の視点のような映
画を観たかったかな。公開は9月14日より、東京は新宿シネ
マカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『サタンタンゴ』“Sátántangó”
(2009年9月紹介『倫敦から来た男』などのハンガリーの鬼
才タル・ベーラ監督が、盟友クラスナホルカイ・ラースロー
の原作に基づき、原作者との共同脚本で1994年に映画化した
上映時間7時間18分の怪作。寂れた田舎町を舞台に1年半前
に死んだはずの男が帰ってくるとの情報が流れ、村人たちの
間で様々な思惑が交錯する。さらに映画の後半では帰ってき
た男の扇動により村人たちの生活が根底から覆される。原作
が発表されたのは1985年で、この物語に政治的な意味がある
かどうか、今となってはその辺のことも理解が難しくなって
いる感じだ。ただし全体で150カットという超長回しの作品
ではあるが、観ている間は映画に引き込まれて一気に見終て
しまえるものだった。なお上映は2時間18分、2時間4分、
2時間56分の3パートに分けて行われた。公開は9月13日よ
り、東京は渋谷のシアター・イメージフォーラム他で全国順
次ロードショウ。)

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07月14日(日)
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