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On the Production
by 井口健二
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■SUKITA 刻まれたアーティストたち(ベルリン・S、蝶の眠り、ラスト・W、北斎、獄友、ラッカ、ボストン S、スクエア、ダリダ、港町)
(2016年『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督
が、ISが首都と宣言したシリア北部の町ラッカでスマホを
武器に闘う人々を追ったドキュメンタリー。原題と異なる邦
題は「RBSS」(Raqqa is Being Slaughtered Silently)と
称する地下の抵抗組織のことで、彼らはISによって日々行
われる公開処刑などの模様をスマホで撮影し、ソーシャルメ
ディアを通じて世界に発信している。しかしそれは当然IS
の逆鱗に触れるものであり、海外に逃れたメムバーにも死刑
が宣告され、暗殺も起きているものだ。そして彼らが拠点に
したドイツでは極右勢力による迫害も生じている。ラッカは
以前は天国とも称される美しい街並みを誇っていたそうで、
そこでの惨状は正に目を覆いたくなる映像だった。でもこの
現実は直視しなければいけない。公開は4月14日より、東京
はアップリンク渋谷他で全国順次ロードショウ。)

『ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた』
                     “Stronger”
(2013年4月15日のボストンマラソンで起きた爆弾テロに巻
き込まれ、両足を失いながらもFBIに対して犯人特定に繋
がる証言を行った男性の姿を、彼自身の回想録に基づき描い
た作品。男性のことは2017年3月26日題名紹介『パトリオッ
ト・デイ』にも描かれていたが、本作ではさらにその後の影
響なども語られており、邦題の副題にある通りの、正直に言
って個人的にはあまり付き合いたくないような話が赤裸々に
描かれている。とは言ってもそれなりにちゃんと描かれてい
るのはさすがのハリウッド映画と思わせる作品だ。出演はジ
ェイク・ギレンホールと、2015年『黄金のアデーレ』などの
タチアナ・マズラニー。監督は2013年5月紹介『コンプライ
アンス−服従の心理−』の製作総指揮を務めたデヴィッド・
ゴードン・グリーンが手掛けている。公開は5月11日より、
東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』“The Square”
(2014年『フレンチアルプスで起きたこと』などのリューベ
ン・オストルンド監督が、2017年のカンヌ国際映画祭で最高
賞=パルムドールを受賞した作品。主人公は現代アートの美
術館でキュレーターを務める男性。彼は参加者を利他主義に
導く次なる展示物「ザ・スクエア」の準備を進めていたが。
ある日、彼が財布と携帯電話を紛失したことから事態が急変
する。物語は他者への無関心や階層間の断絶など現代社会が
抱える問題を抉りだすものだが、前作の時も感じたがこの監
督は人間を信じていないと思わせる。これは2018年2月4日
題名紹介『ハッピーエンド』などのミヒャエル・ハネケ監督
にも感じるが、ハネケはそれを不条理に描くのに対して本作
はリアルに描き切る所が恐ろしい。現代に突き付ける刃とい
う感じの作品だ。公開は4月28日より、東京はヒューマント
ラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『ダリダ あまい囁き』“Dalida”
(1987年に54歳で他界した女性歌手ダリダの生涯を描いた伝
記ドラマ。イタリアからの移民としてエジプトに暮らしてい
た家族の許に1933年誕生したダリダは、1954年度のミス・エ
ジプトに選ばれるほどの美貌で、1956年に歌手として活動を
開始。以後亡くなるまで第1線で活躍した。その間には恋多
き女性としても知られたようで、そんな奔放な人生が描かれ
ている。正直に言って来日公演もしたという歌手の名前はあ
まり覚えていなかったが、映画が始まって直に流れる『バン
ビーナ』と『コメ・プリマ』の2曲は聞き覚えがあった。で
も調べてみると2曲ともカヴァーだったようで、彼女の歌で
知っていたのではないようだ。とは言え時流に合せて最後ま
で現役を通した姿は素晴らしいもので、そのパワフルな歌声
にも魅了される作品だ。公開は5月19日より、東京はヒュー
マントラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『港町』
(2012年7月紹介『演劇』などの想田和弘監督による「観察

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03月04日(日)
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