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On the Production
by 井口健二
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■奴隷区/僕と23人の奴隷、歌舞伎町はいすくーる、ポリス・ストーリー レジェンド、ホドロフスキーのDUNE+Oscar
なおエピローグには、謎の紋章の入ったペンダントが此見よ
がしに登場するが、果たして続編はあるのかな。
それと、試写会の後でクライマックスがあっけないと批判し
ている人がいた。でも日本のシステムでは他にも手段はある
が、一般的にはこの状況は避けられない。それをギリギリで
回避するシーンはマニアには垂涎のものになっていた。
公開は初夏に、全国ロードショウとなる。

『ホドロフスキーのDUNE』“Jodorowsky's Dune”
昨年11月27日付第26回東京国際映画祭《ワールド・フォーカ
ス部門》でも紹介している未完に終ったSF映画を検証する
ドキュメンタリー。
アレハンドロ・ホドロフスキーは1929年チリの生まれ。学生
時代に『天井桟敷の人々』に感動し、パントマイムにのめり
込んで大学を中退。パリで放浪中にマルセル・マルソーと知
り合い、共にメキシコに渡って100以上の舞台を演出する。
さらに1967年に映画処女作“Fando y Lis”、次いで1970年
に“El topo”を発表するが、監督曰く「ユニオンの存在を
知らなかった」ためにメジャー系の配給を断られ、やむ無く
ミニシアター系で公開すると、カルト的な評価を得る。
そして1973年に発表した“The Holy Mountain”は、2年間
のロングランを記録することになる。本作の出来事はこの頃
から動き始める。それが本作では、ホドロフスキー本人への
インタヴュー証言を許に綴られて行く。それは…
この“The Holy Mountain”のヨーロッパ配給を手掛けた映
画プロデューサーのミシェル・セドゥーから新作を求める声
を掛けられ、ホロドフスキーは咄嗟に“Dune”の題名を挙げ
る。しかしこの時、彼はまだ原作を読んでいなかった。
ところがセドゥーは直ちに映画化権の取得に乗り出し、その
獲得は順調に進んで準備が始まる。こうしていよいよ原作に
対峙したホドロフスキーは、その難解さに苦慮しながらも脚
本を完成させる。
そしてホドロフスキーは、自分と共に映画製作を進める戦士
を集め始める。その顔ぶれはメビウス(ジャン・ジロー)、
クリス・フォス、H・R・ギーガー、ダン・オバノン。彼ら
を選ぶまでの過程や理由なども語られる。
さらに音楽にはピンク・フロイド、マグマ。今で言うヘヴィ
メタルに近いバンドに、映画に登場するそれぞれのキャラク
ターのテーマ音楽を担当させるというものだ。その交渉の経
緯なども語られる。
一方、キャスティングでは、サルバドール・ダリ、ミック・
ジャガー、オースン・ウェルズ、デイヴィッド・キャラダイ
ン、ウド・キア。特にダリとウェルズに出演契約を結ばせる
戦略は、映画祭では爆笑が湧いたものだ。
また主演には“El topo”にも起用した自らの息子を配役。
そのため息子には武道家についての過酷な訓練も課す。その
事情なども息子本人の証言も含めて語られる。そこでの監督
の決意も聞き物だ。
こうして製作準備で起きた様々な出来事が、ホドロフスキー
とプロデューサーのセドゥ、さらにフォス、ギーガー、オバ
ノン未亡人、ダリのディーヴァ、当時のマグマのリーダーら
の証言によって浮き彫りにされて行く。
そしてその間には、ホドロフスキーが構想した物語が、メビ
ウスの手掛けた絵コンテによって再現され、そのカメラワー
クなども絵コンテをアニメーションにして描かれる。それは
正に完成版の映像を見る感覚のものになっている。
こうして準備は着々と進んで行ったが、その製作は撮影直前
に突然中止が発表されてしまう。その理由は…。しかしその
衝撃が如何に深いものであったかは、オバノン未亡人の証言
などから伺い知ることができる。
結局映画は作られなかった。しかしその遺産とも言うべき集
まった戦士たちのその後の活躍は、現在も連綿と続いている
SF映画の歴史に直結しているもの。それは決してルーカス
『スター・ウォーズ』のお陰だけではなかったのだ。
公開は6月14日から、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン
トラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次で
行われる。

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03月09日(日)
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