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On the Production
by 井口健二
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■ペーパーB、ディアトロフI、アップサイドダウン、イントゥ・ダークネス、アイス、エンド・オブ・W、パニック・マーケット、I・ベルイマン
ウフーラ、スールー、チェコフらが搭乗する宇宙船USSエ
ンタープライズの物語が展開される。
そして本作では、そのプロローグで宇宙艦隊の規定に反して
未開惑星の危機を救ったカークに対し、船長解任の命令が下
されるところから始まる。
ところがその直後に、1人の男性によって宇宙艦隊の大本営
が襲われ、ほとんどの艦長が死亡若しくは負傷する事態とな
る。このため急遽カークらがその跡を追い、男性が逃亡した
惑星に赴くことになるのだが…。その惑星が位置するのは、
敵対するクリンゴンの支配する領域だった。
こうしてカークらは隠密裏に惑星に潜入し、犯人を確保する
作戦を開始する。しかしその先には、宇宙艦隊を揺るがす別
の脅威も待ち構えていた。
物語的にはテレビシリーズのテイストと言えるかな。ただし
本作では、それを精緻なVFXと3D、さらに一部劇場では
IMAXの大画面で豪華絢爛に描くものだ。しかもその中には、
過去のシリーズの名場面や人物も登場し、成程この後の物語
がそう続くのかと納得できる作りにもなっている。
実は前作の時には、観ていて多少の違和感があった。それは
俳優が違うだけでなく、キャラクターの性格付けなどが何と
なくオリジナルと異なる感じがしたものだ。しかし本作を観
てその想いは払拭された。そしてまさか自分がスタ・トレで
泣くとは…という展開になっていたものだ。
出演は、クリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・
アーバン、サイモン・ペッグ、ゾーイ・サルダナ、ジョン・
チョウ、アントン・イェルチンのレギュラーに加えて、昨年
5月紹介『SHERLOCK』のベネディクト・カンバーバッチ、同
月紹介『MIB3』のアリス・イヴ、さらに初代ロボコップ
のピーター・ウェラーらが登場する。
監督はJ・J・エイブラムス。エイブラムスは、来年撮影さ
れる“Star Wars Episode Z”の監督が発表されており、本
シリーズの後続作品に関る可能性は低いと思われるが、本作
はそんな彼がシリーズを後継者に託すのにはベストの作品だ
と言えそうだ。
日本公開は8月23日から、2D/3D及びIMAX3Dで行われ
る。
『アイス』“Ice”
1989年「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で最優秀作品賞
を受賞し、1997年には再来日して同映画祭の審査員を務め、
1999年に急逝したアメリカの孤高の左翼系映画作家ロバート
・クレイマーが、1969年に発表した作品。
舞台はアメリカの近未来。映画の巻頭ではメキシコで解放戦
線が攻勢を強めているという状況が紹介される。一方、アメ
リカ国内には地下に潜った革命組織が有り、彼らは潜伏状態
から抜け出すためのゲリラ戦の開始を模索している。
そのゲリラ戦の展開には、黒人組織やプエルトリコ、メキシ
コ人の組織との同盟が不可欠だったが…。作品が発表された
1969年というと、ベトナム反戦運動も最盛期と思われるが、
映画の物語はその方向には向かず、あくまでもアメリカ国内
の革命を目指しているようだ。
しかもそこには、黒人やヒスパニックの人たちとの確執が描
かれるなど、現在の僕らの認識からはかなりの違和感を覚え
る。逆に言えばそれが当時の現実だったとするなら、これは
僕自身の当時に対する認識も変えられることになる。
それは確かに1970年公開の映画『いちご白書』でも黒人問題
の描き方は微妙だったものだが、それがノンポリの白人学生
ではなく、1936年生まれの左翼系映画作家の認識もそうだっ
たとするなら、認識を改める必要はありそうだ。
それほどまでにアメリカの人種問題というのは複雑で根が深
かったということなのだろう。
その一方で、映画には革命に対する焦りのようなものも感じ
られ、日本の1969年は「70年安保」を控えて学生運動も盛
んだったが、それがその後は「日本赤軍」など鬱積して行く
状況が見事に予言されている感じもする作品だった。
公開は8月上旬に、東京は渋谷のユーロスペースにて。なお
公開はクレイマー監督の1975年作品『マイルストーン』と、
2作品一挙ロードショウとなる。
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06月30日(日)
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