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On the Production
by 井口健二
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■怪特探、サイレントヒル・リベレーション、フッテージ、アンチヴァイラル、ファインド・アウト、俺俺、私のオオカミ少年、SHORT PEACE
物語は、セレブが罹った病気のウィルスが売買されていると
いう時代が背景。主人公はそんなウィルス売買の大手会社に
勤務する男性。しかも彼はそのウィルスを密かに持ち出し、
闇市場に流して金を稼いでもいた。
その手口は、自らの体内にセレブの血液を注射し、ウィルス
を体内に入れて会社の厳重なセキュリティを突破するという
もの。ところがある日、彼は体内に入れたウィルスが不治の
病のものだったことを知る。
そしてそのセレブの死去が伝えられ、彼は人気セレブと同じ
ウィルスを持つ唯一の人間として、セレブのファンやコレク
ターの標的になってしまう。さらに彼は企業間の戦いにも巻
き込まれる。
ブランドン監督は、大学映画学科の1年生だった時に深刻な
インフルエンザに罹り、その病床でウィルスの存在について
考察を重ねたのだそうだ。その結果として生み出されたのが
この作品の脚本とのことだ。
そしてブランドン監督は、その脚本のワンシーンを抜き出し
て2008年に“Broken Tulips”という処女作の短編映画を制
作。その作品が学生映画祭での最優秀監督賞なども受賞し、
製作者の目に留って本作の実現に漕ぎ着けたものだ。
こうして実現された作品だが、映画のイメージには父監督の
作風に似ているところもある。しかし父監督の作品がどちら
かというと神秘的、超常的な方向に流れるのに対して、息子
監督の作品は理論的というか疑似科学的として筋が通って、
正統派のSFという感じもしてくるものになっていた。
一方、ウィルスに感染した後のメタモルフォーゼなどには、
父監督の演出を髣髴とさせるものがあるが、その背景には、
1996年『クラッシュ』にも携わった美術スタッフのアーヴィ
ンダー・グレイウォルなど、長年の付き合いの顔触れもいる
ようで、その影響は強そうだ。
なお本作は、昨年のカンヌ国際映画祭・ある視点部門に正式
出品されたもので、現地ではコンペティション部門に出品さ
れた『コズモポリス』の父監督とのツーショットも実現した
とのことだ。

『ファインド・アウト』“Gone”
昨年12月紹介『レ・ミゼラブル』などのアマンダ・セイフラ
イト主演によるサスペンス・ミステリー作品。
物語の舞台はオレゴン州ポートランド。その森林も間近な町
に住む主人公は、恐怖の体験から人間不信に陥っている。そ
れはその町で連続する若い女性の行方不明事件の関連すると
も思われるが、唯一の生還者である彼女の証言では、その関
係は明確にはならなかった。
そして再び彼女の周囲に危険が感知され、彼女の妹の行方が
判らなくなる。その事態に彼女は直ちに警察に駆け込むが、
刑事たちはなかなか重い腰を上げようとしない。それほどに
彼女の言動は不審の目で見られていたのだ。しかしその中に
も、気に留めてくれる新人刑事はいたが…
若い女性が単独で行方不明者を探すというテーマは、1965年
の“Bunny Lake Is Missing”(バニーレイクは行方不明)
など様々なヴァリエーションがあるが、最近では主人公の妄
想の可能性など観客も巻き込んだ仕掛けがいろいろ施されて
いる。
本作はそのような最近の傾向も踏まえて、映画の始まりでは
一体どの方向に進むのかも判らない感覚で、主人公を含めて
誰を疑えばいいのかも判らない、見事なシチュエーションと
なっている。
そしてその中から徐々に真実が明らかにされて行くのだが、
そこに至る脚本の構成や演出も巧みで、これは見事と言える
作品になっていた。脚本は、2008年3月紹介『ブラックサイ
ト』の最終稿などを手掛けたアリスン・バーネット。因に、
この物語は穴の底にいる女性というイメージだけから構築さ
れたそうだ。
監督には、ブラジル出身で第1作がモスクワ国際映画祭の批
評家審査員賞、第2作がサンダンス映画祭の特別審査員賞を
受賞し、第3作がカンヌ映画祭・ある視点部門に出品され、
4作目の本作でハリウッドデビューとなったエイトール・ダ
リアが起用されている。
共演は、2011年6月紹介『アイ・アム・ナンバー4』に出て

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04月10日(水)
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