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On the Production
by 井口健二
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■恋する輪廻、逃走車、天使の分け前、ひかりのおと、ダーク・タイド、ブラインドマン+DVDマガジン記者会見、ナンバーテンブルース追記
一昨年の東京国際映画祭「日本映画ある視点」で上映され、
その後は撮影地の岡山県各所で巡回上映されていた作品が、
今度は全国公開されるということで試写が行われた。
作品は「地産地『生』」映画と自称されているもので、岡山
県の山深い土地に住む酪農家の周囲を取り巻く出来事が描か
れる。
主人公は、一度は東京に出たものの故郷に舞い戻った青年。
彼には恋人がいるが、その女性は未亡人でさらにその子供は
亡き夫の「家」の唯一の跡取り。従ってその恋人が彼の許に
来るためには子供を置いてこなければならない。そんな状況
の中で、現在の日本農業の置かれた状況が語られる。
それはまあ判らないではない話なのだけれど、一方で日本の
農業(酪農)の困難さを言いながら、他方で跡取りと言われ
ても、第三者の観客としてはそれを真剣に悩むところには行
かない。もちろんそれは農家にとっては重要な話なのだろう
が…。
しかもその人間関係が判り難くて、実は映画の最初にテロッ
プが1枚出るのだが、それと本作の物語との繋がりも映画の
終盤になってようやく得心したもので、それまでは映画の中
で何が起きているのかもさっぱり判らなかった。この辺は最
近の日本映画によくある傾向ではあるが。
で、得心したらもう映画は終わっていた訳で、これで感動で
きるのは相当に頭の良い人たちなのだろう。確かに映画のエ
ンディングは感動的な映像で締め括られるが、これで済むな
ら、それまでの主人公の悩みは何だったのか、という感じに
もなってしまう。
そこに希望はあるが、それは本作に描かれた物語の未来とは
別のもののような感じもする。結局本作の場合は、大上段に
振りかぶった日本農業の未来の問題と、物語としての男女関
係の話とがうまく折り合わさっていないもので、その辺では
中途半端にも感じられた。
脚本と監督は、実際に現地で農業を営んでいるという山崎樹
一郎。プロデューサーは2008年12月紹介『へばの』も手掛け
た桑原広考。プロデューサーの前作もそうだが、日本各地に
隠された問題を今後も映画化してくれることを期待したい。
出演は、監督の前作にも出演の藤久善友。他に森衣里、真砂
豪。撮影地の岡山県や関西で活動する人たちを中心に起用さ
れているようだ。

『ダーク・タイド』“Dark Tide”
2003年3月紹介『ブルークラッシュ』などのジョン・ストッ
クウェル監督による海洋が舞台のアドヴェンチャー最新作。
因に1986年『トップガン』の出演者でもあるストックウェル
には海洋もの以外の監督作もあるが、自らサーファーという
監督は海洋ものの評価が高いようだ。
舞台は、南アフリカ共和国ケープタウン沖の海洋。アシカの
繁殖地であるそこは、同時にアシカを餌とするサメの有数の
生息地でもあった。そんな海では観光客相手にサメを間近に
見せるツアーも盛んに行われていた。
その中で海洋生物学者のケイトは、シャークダイヴ中に同僚
のダイヴァーをサメに殺され、以来シャークダイヴの仕事か
らは遠のいていた。しかし銀行から借りていた資金の返済の
期限が迫り、ボートを差し押さえられる事態になる。
そんな折、事故以来疎遠になっていた夫のジェフが高額な報
酬の得られる仕事を持ちかけてくる。それはスリルを求める
金持ちの男性が、通常使用されるケージを出て、サメと一緒
に泳ぎたいというものだった。
そしてケイトは、自ら失った自信を取り戻す目的も込めて、
夫と客を乗せたボートでシャークダイヴのツアーを開始する
が…。そこには最凶の恐怖が待ち構えていた。
出演は、昨年12月紹介『クラウド・アトラス』にも出演のハ
リー・ベリー。2003年8月紹介『S.W.A.T.』などのオリヴィ
エ・マルティネス。2009年8月紹介『パイレーツ・ロック』
などのラルフ・ブラウン。
他に、1989年『白く渇いた季節』に出演のThoko Ntshinga、
2008年2月紹介『マンデラの名もなき看守』に出演のSizwe
MsutuとMark Elderkin、新人のルーク・タイラーら、南アフ
リカ共和国の俳優たちが脇を固めている。

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01月20日(日)
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