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On the Production
by 井口健二
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■ダイアナ・ヴリーランド、故郷よ、マーサあるいは…、タリウム少女の…、ももいろそらを、砂漠でサーモン…、しあわせカモン、立川談志
を図ったというもの。しかしその少女は元から科学に強い関
心を持っていたとされ、そのような興味の観点から現代科学
の情報も紹介されて行くものだ。
そこで紹介される現代科学の最前線では、広島大学・住田正
幸教授による「透明ガエル」や、東京女子医科大学・八代嘉
美特任講師による「iPS細胞」の話などがあり、さらに日本
ラエリアンムーブメント・伊藤通朗代表による宗教論なども
紹介されている。
因にQ&Aでの監督の発言によると、住田氏はウェブで画像
を見て直接出演交渉した。SF作家クラブ会員でもある八代
氏は著作を見たことと、友人の友人であった。そして伊藤氏
は以前から興味があって集会などにも参加しており、本作は
3人にも見せたが、伊藤氏は絶賛してくれたとのことだ。
その一方で美容整形の映像なども挿入され、これらのドキュ
メンタリーの部分は物語にいろいろ関りを持つように描かれ
ているものだ。
ドラマ部分の出演は、主役にグラビアアイドルの倉持由香、
母親役には2010年8月紹介『名前のない女たち』などの渡辺
真起子。他に古舘寛治、身体改造アーティストのTakahashi
らが脇を固めている。
監督は、1999年『新しい神様』という長編ドキュメンタリー
作品で、山形国際ドキュメンタリー映画祭・国際批評家連盟
賞特別賞を受賞している土屋豊。
フィクションの作品は初めてのようだが、実はもっと製作費
の高い作品の立ち上げに失敗し、自らを見つめ直して製作費
300万円で本作を制作。現状は赤字で一般公開に向けての宣
伝費などをカンパで集めている状況とのことだ。
作品の見た目はかなり物議を醸しそうなものだが、観終えれ
ば、それなりに作者の言いたいところは判ってくるし、それ
は特に問題になるようなものではない。ただそこに辿り着く
までに多少観客にも覚悟がいるかもしれないという作品だ。
『ももいろそらを』
昨年の東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で上映さ
れ、同部門の作品賞を受賞した作品。以前にも短く紹介して
いるが、本作は来年1月の一般公開が決定し、試写が行われ
てプレス資料も配布されたので改めて紹介する。
映画は、最初に2035年というタイトルが出て、女性のナレー
ションで開幕する。そして主人公は、世間をちょっと斜に見
ている感じの高校1年生の女子。彼女の日課は、新聞の紙面
を記事ごとに採点して、その日の世間を評価することだ。
そんな主人公がある日街で財布を拾う。その財布には大金が
入っていて、一緒にあった学生証から持ち主の住所は判明す
るが、その表札を見て彼女は以前に読んだある記事を思い出
す。その財布は天下り役人の息子の持ち物だったのだ。
そこでモヤモヤを感じた彼女は、街で出会った町工場の経営
者に金の一部を渡してしまったりもするのだが、結局その残
金を返しに行ったとき、息子はある提案を彼女にしてくる。
それは入院している彼の友人のために、明るいニュースだけ
の新聞を作ってくれというものだった。
こうして彼女は、遊び仲間の女子や財布の持ち主の彼も巻き
込んで新聞作りを開始するが…
出演は、いずれも映画は初出演の池田愛、小篠恵奈、藤原令
子。ただし池田と藤原にはテレビドラマの経験が有り、また
小篠は本作の後に今年7月紹介『ふがいない僕は空を見た』
に出演している。他に資生堂などのモデルの高山翼、落語家
の桃月庵白酒らが脇を固めている。
脚本と監督と撮影は、テレビ東京で「ASAYAN」などを手掛け
てきた小林啓一。初監督作にして受賞を果たした本作では、
サンダンス映画祭、ロッテルダム映画祭などにも招待された
ようだ。
なお本作は全編がモノクロで描かれているが、最後のシーン
をパートカラーにすべきかどうか記者会見で質問が出た。そ
の点について監督は、敢えてオマージュとすることを避けた
という回答で、それは納得したものだ。
また僕は若い出演者にシナリオに違和感はなかったか訊いて
みたが、一部には違和感があったそうで、その回答は脚本家
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11月18日(日)
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