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On the Production
by 井口健二
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■スケッチ・オブ・ミヤーク、推理作家ポー、くろねこルーシー、火祭り、カハーニー、シャドー・チェイサー、みんなで一緒に、菖蒲、大奥2
き火がそこかしこに燃え盛っている。そして人々は明日から
の正月休暇の旅行に思いを馳せているが…。主人公だけが知
る秘密が、彼女を思い悩ませる。
イスラム原理主義が幅を利かせ、主人公もチャドルをしなけ
れば街を歩けない。そんな風土の中で男尊女卑や女性の地位
向上など、いろいろな側面がシリアスやユーモアを巧みに織
り交ぜて描かれている。
今年2月紹介しアカデミー賞外国語映画賞に輝いた『別離』
のアスガー・ファルハディ監督による2006年作品。受賞作と
同様のイスラム国家の今が描かれている。しかも本作では、
物語の展開を1日に限定しているところも面白かった。
『カハーニー/物語』“कहानी”
9月14日〜23日に福岡で開催される「アジアフォーカス・福
岡国際映画祭」で上映される作品の1本。
プロローグはコルカタの地下鉄で起きた無差別テロ。そして
2年後。そのコルカタの空港に臨月を思わせるお腹を抱えた
女性が降り立つところから物語は開幕する。彼女は1ヶ月前
に現地に赴任し、音信の途絶えた夫を捜しに来ていた。
ところが夫が勤務していたはずの会社には在籍の痕跡すらな
く。警察に行っても全く手がかりは得られない。そこで彼女
は、夫が宿泊していたはずの下町のホテルに居を構え、彼女
に親切にしてくれる警官と共に捜査を開始する。
彼女の持つ唯一の手段は、夫と彼女を写した1枚のスナップ
写真。その写真からは夫がある事件の容疑者に似ていること
が判明する。しかしそこには巨大な陰謀が隠されていた。そ
して彼女の接触した人物が次々に殺され始める。
インド映画ではあるけれど歌も踊りもない作品。しかし2時
間3分の上映時間では、たっぷりとしたミステリーとサスペ
ンスが描かれる。しかも構成が緻密で、最後に全ての謎がぴ
たりと収まるのには、久々に醍醐味も感じられた。
因に原題はヒンディ語で「物語」そのものだそうで、正しく
そう言う感じの「お話」が展開されるものだ。
脚本と監督はスジョイ・ゴーシュ。2009年の“Aladin”とい
う作品ではインドのアカデミー賞で3賞を受賞したようで、
今年公開の本作でも受賞が期待できそうだ。
* *
なお「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」では、この他
にアジア作品17本と、ファルハディ監督作品は全作5本、さ
らにその他の作品が上映される。中には『時空の扉』という
中国製のタイムトラヴェル物もあるようで、これらの作品が
東京でも一般に見られることを期待したい。
『シャドー・チェイサー』“The Cold Light of Day”
ブルース・ウィリス、シガニー・ウィーヴァーの共演による
アクション・ミステリー。
主人公はアメリカ人の青年。彼は自ら経営する会社から休暇
を取り、大使館勤務の父親の関係でスペインで暮らす両親の
許を訪れる。そこには弟とその恋人も来ていた。そんな主人
公と父親の間には確執もあるようだ。
それでも5人揃って父の操縦するヨットで沖に出ていた時、
主人公のミスで弟の恋人が負傷してしまう。そこで主人公は
単身で薬を買いに海岸に泳ぎ渡るのだが、彼が海岸に戻った
とき、沖に停泊していたはずのヨットが消えていた。
そして、現れた父親は主人公に緊急事態を告げ、彼に協力を
求めるが…。それは彼を、国際テロ集団も絡む陰謀に巻き込
んで行くことになる。
主演は、2011年11月紹介『インモータルズ』などのヘンリー
・カヴィル。他に、スペイン・マドリード生まれで、2009年
ヨーロッパ映画でシューティング・スターの1人に選ばれた
ヴェロニカ・エチェギ。彼女は初の英語作品となる。そして
2011年7月紹介『この愛のために撃て』などのロシュディ・
ゼムらが脇を固めている。
監督は、2008年11月紹介『その男ヴァン・ダム』などのマブ
ル・エル・メクリ。脚本は、2009年11月紹介『監獄島』では
監督、脚本も務めていたスコット・ワイパーと、テレビシリ
ーズを数多く手掛けるジョン・ペトロ。製作は今年8月紹介
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09月02日(日)
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