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On the Production
by 井口健二
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■アクシデント、孔子の教え、くまのプーさん、ラビット・ホール、カンパニー・メン、サンクタム(再)、タナトス+追悼
の、最も信頼しているはずの夫にまで向けられてしまう。そ
んな中で彼女が安らぎを得たのは…、意外な人物だった。
自分がすでに子育てを完了した身としてはもはやこのような
心配はほとんどないが、以前は常に不安に駆られていたこと
を思い出す。それが実際に起きてしまったときの悲劇。それ
に自分が耐えられるか、そんなことも考えさせられた。
題名からは、主演女優の関係でオーストラリアが舞台かと想
い、生態系破壊で問題になっているウサギの話かと考えてい
たら、題名は『不思議の国のアリス』から採られたものだっ
た。しかもこの題名にはSFファンの興味を引く内容も含ま
れている。
そのSFファンの目から敢えて誤解を生むことを承知で書い
て置くと、本作は映画化もされたスティーヴン・キング原作
『ペット・セメタリー』のSF版と言えるもの。ただし、本
作はSFではないが…、という感じの作品だ。
さらに映画化用の脚色も手掛けた原作戯曲の作者も、監督も
SFに対する理解度が相当に高い人たちと感じられ、その辺
のSFに関わる部分の描き方がファンとしても納得できるも
のになっていた。その描き方に僕は充分に満足したものだ。
その脚本は、本作の原作戯曲でトニー賞とピュリツァー賞を
受賞したデヴィッド・リンゼイ=アベアー。監督は、2001年
12月紹介『ヘドウィック・アンド・アングリーインチ』や、
2007年5月紹介『ショートバス』などのジョン・キャメロン
・ミッチェルが担当した。
共演は、2008年7月紹介『ダークナイト』などのアーロン・
エッカート、1994年『ブロードウェイと銃弾』などで2度の
オスカーに輝くダイアン・ウィースト、2008年8月紹介『ブ
ラインドネス』などのサンドラ・オー、2008年12月紹介『ラ
ーメンガール』に出ていたタミー・ブランチャード、それに
本作で映画デビューのマイルズ・テラー。
監督の前の2作にはかなりトリッキーな面白さも感じたが、
本作では主題を真正面に据えてじっくりと描き切っている。
彼にこんな素晴らしい才能があったとは…。彼を監督に選ん
だ製作者キッドマンの英断にも拍手を贈りたい作品だ。

『カンパニー・メン』“The Company Men”
『ER』などのジョン・ウェルズの製作・脚本・監督で、突
然リストラされた「会社人間」たちの姿を描いた作品。
主人公の1人目は、37歳で大企業の営業部長を務める男性。
年収12万ドルで朝ゴルフも楽しめた優雅な生活が、ある日突
然激変する。彼の在籍する事業部門が業績不振で、大幅なリ
ストラが実施されることになったのだ。
彼が在籍している造船事業は複合企業の礎となった部門で、
現CEOはその設立者の1人だった。しかし現在CEOの頭
にあるのは株価を維持して企業買収を防ぐことだけ。そのた
めには不振事業のリストラが一番手っ取り早い手段だった。
そしてもう1人の主人公は、そのCEOと共に複合企業を育
て上げてきた造船部門のトップ。彼は、6000人の従業員を抱
える部門を守ろう必死に画策するが、もはや会社の(CEO
の)決定を覆すことは出来ない。
こうして1人目の主人公は馘を言い渡され、再就職の道を探
り始めるが、希望年収を半減させても再就職の口はなかなか
見つからない。しかも彼には食べさせなければならない家族
や、住宅のローンも残っていた。
自分自身が数年前に同じような目に合った身としては、主人
公たちの焦りなどは手に取るように判ったし、最初の内は高
を括っているような主人公の姿には、自分もそうだったかな
あとさえ思わされた。
そこには日本とアメリカの違いはあるが、僕も主人公と同じ
ような再就職のセミナーみたいなものに通って、職歴の書き
方や自己アピールの仕方なども練習したから、その辺は同じ
様なものだったなあと納得したりも出来た。
実は試写会では、主人公の焦る姿に対して馬鹿にしたように
けたたましく笑う女声の笑い声も聞こえてきた。その人は多
分こういう目に合ったことなど無いのだろうけど、いざとな
ったときの現実の厳しさは、その内に思い知って貰いたいも

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08月07日(日)
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