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On the Production
by 井口健二
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■日輪の遺産、酔拳、チョン・ウチ、ヤバい経済学、エッセンシャル・キリング、デンデラ、POTC生命の泉+Terminator
略等分に描いており、お陰で上映時間も2時間16分の長尺。
ただ、そこまで描く必要があったかというと…。ここは、も
う少しどちらかに集中した方が良かったかな。そんな感じも
する作品だった。
でもアクションは見事で、それは観ていて飽きさせないもの
になっていた。
『ヤバい経済学』“Freakonmics”
シカゴ大学の経済学部の教授スティーヴン・D・レヴィット
と、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーが2005年
に発表したノンフィクション本に基づき、昨年11月に紹介し
た『ビン・ラディンを探せ』のモーガン・スパーロックや、
同『ジーザス・キャンプ』のハイディ・ユーディング&レイ
チェル・グレイディらが映像化した作品。
原作本は見ていないが、世間で定説とされるいろいろな事象
を統計などを使って検証しているもののようだ。ただしそれ
をincentive(誘因)という経済用語で括っているのが学者
らしいところのようで、本作でもその誘因を探すことが中心
に描かれている。
そして本作では、命名がその子供の将来に影響するか(スパ
ーロック監督)、日本の大相撲の八百長問題(2006年『エン
ロン』などのアレックス・ギブニー監督)、1990年代以降の
アメリカの犯罪発生率減少(ユージーン・ジャレキ監督)、
懸賞金で高校生の学力は上がるか?(ユーディングら監督)
などが検証される。
この他に、レヴィットとダブナーの掛け合いのようなインタ
ヴューといろいろな小ネタが、本作の製作総指揮者でもある
セス・ゴードンの監督で挿入されている。
ただまあ、全体が93分の作品で、その中でこれだけのテーマ
を扱っているのだからそれぞれはかなり駆け足というか、そ
れほど深く追求されているものではなく、大体は原作本をそ
のまま映像化しているだけのもののようだ。
という中で、大相撲の八百長問題が比較的チャンとしたドキ
ュメンタリーになっているのは面白いところで、これが今春
の事件発覚の前に映像化されていた点は認められるべき作品
だろう。
といってもこれも、週刊ポストの記事を書いたジャーナリス
トらへのインタヴューや、それぞれのアーカイブ映像が中心
だから、さほどドキュメンタリーとして優れている訳ではな
いが、事前に勝率からそれを予言している辺りは面白いと言
えば面白かった。
それにこの映像などは、少なくとも今春の事件発覚以降に日
本のマスコミがもっと取り上げているべきものだが、そんな
ものは観た記憶が無いのも、本作のいう誘因の一つかとも思
えるところだ。
ただし本作によると、アメリカの報道でも米軍の行為は「厳
しい取り調べ」で、同じことを中国軍がやると「拷問」にな
るそうだから、所詮マスコミというのはそんなものなのだろ
う。次には是非とも、福島原発と計画停電の問題を検証して
もらいたいものだ。
『エッセンシャル・キリング』“Essential Killing”
昨年の東京国際映画祭で上映された作品で、その時にも鑑賞
しているが、一般公開が決まり改めて試写が行われた。
アフガニスタンの荒涼とした砂漠の上空をヘリコプターが飛
行中、その眼下でアメリカ人に対する襲撃事件が発生。襲っ
たアラブ人と見られる男は、ヘリコプターや地上軍の追跡に
よって拘束される。
拘束された男は厳しい拷問を受け、やがて目隠しのまま別の
場所に移送。ところがその移送中に起きた偶然の事故で男は
逃亡に成功してしまう。しかし彼が置かれたのは雪深い森の
中。故郷の砂漠とは全く違う環境の中で壮絶なサヴァイヴァ
ル劇が始まる。
上映時間は83分の作品だが、その間の男は全くの無言。周囲
では英語やアラビア語やポーランド語なども聞こえるが、男
には初め聴覚が一時的に失われているなどの設定もあって、
一切の台詞が排されている。
先に書いたように本作は映画祭でも観ているが、何本も纏め
て観る映画祭ではそれぞれの作品の印象は薄れがちだ。その
中で本作はサヴァイヴァルの壮絶さは記憶されたが、展開が
偶然に拠り過ぎているなど物語の印象が薄い感じがした。
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05月15日(日)
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