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On the Production
by 井口健二
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■あなたの初恋…、パーフェクト・ホスト、モールス、アントニオ・ダス・モルテス、黒い神と白い悪魔、テンペスト、人生ここにあり+闘病記
を大事にしたかったのだろうし、その気持ちが本当に嬉しく
なってしまうような作品だった。
オリジナルを見逃した人もこの作品を観れば大丈夫と言える
作品だ。

『アントニオ・ダス・モルテス』
   “O Dragão da Maldade contra o Santo Guerreiro”
『黒い神と白い悪魔』“Deus e o Diabo na Terra do Sol”
前回紹介した『狂乱の大地』に続くグラウベル・ローシャ監
督による作品で、共に希代の殺し屋アントニオが登場する2
作品。
1969年発表の『アントニオ…』はこの年のカンヌ国際映画祭
で監督賞を受賞、また1964年発表の『黒い神…』は1966年サ
ンフランシスコ映画祭大賞を受賞して、シネマ・ノーヴォの
名を世界に知らしめた。
因にこの2作品は、以前に日本で公開されているものだが自
分では鑑賞した記憶がなく、また『黒い神…』については、
今回は完全版上映とされているものだ。
その『黒い神…』は、ブラジル北部の荒野で暮らす牛飼いが
主人公。小作人だった彼は、ふとした弾みで領主を殺してし
まい妻と共に逃亡を余儀なくされる。そして聖地の存在を予
言する黒人神父の率いる教団に身を寄せる。
ところがその教団は徐々に勢力を増し、やがて政府軍とも闘
いを繰り広げるようになって行く。そんな教団に手を焼いた
地主やその地主と結託する教会は、盗賊団ガンガセイロの殺
し屋アントニオ・ダス・モルテスを雇い、教団の討伐に向か
わせるが…
この殺し屋による襲撃シーンはかなり唖然とさせられるもの
だったが、白茶けた荒野の風景がモノクロの画面によくマッ
チして、『戦艦ポチョムキン』のオデッサ階段シーンを思い
出させるような映像が造り出されていた。
これに対して5年後に製作された『アントニオ…』は殺し屋
を主人公にしたカラー作品。この作品では若い聖女を中心と
した教団が描かれる。そしてそこに集まる若者たちの狂乱に
憂慮した町の警察署長がアントニオを呼び寄せるが…
物語は互いには独立しており、出演者も殺し屋役のマウリシ
オ・ド・ヴァッレ以外は異なるものだ。ただ、僕は試写の行
われた上記の順番で観たが、物語の内容的にはやはり発表順
に観た方が良いようには感じられた。
作品ではいずれも宗教と為政者の関係が描かれており、それ
はいろいろな意味で現代にも通じる物語とも言え、それはそ
れで面白い。でもまあ、作品の価値としては、やはり映画史
的な部分の方が高いかな。そんな感じの作品だ。

『テンぺスト』“The Tempest”
日本では「あらし」の題名でも知られるシェークスピアによ
る単独では最後と言われる戯曲を、1997年の初演以来、世界
中で今も上演が続いているミュージカル「ライオンキング」
や、2003年6月紹介『フリーダ』などのジュリー・テイモア
監督が映画化した作品。
シェークスピアの原作は、SF映画ファンにとっては1956年
『禁断の惑星』の基になった作品としても知られており、そ
のため僕も原作のストーリーは読んでいたが、演劇として観
るのは初めてだった。
その映画化は、物語としては原作の通りだが、魔法使いがプ
ロスペラという名前の女性に変えられていたり、ハワイ島で
撮影された野外風景や魔法や妖精のシーンにはVFXも多用
されるなど、テイモア監督らしい外連に満ちた作品になって
いた。
因に物語は、ナポリ王とミラノ大公の乗船が嵐で難破し、一
行は絶海の孤島に漂着する。そこには弟にその座を追われた
かつてのミラノ大公が、島で生まれた娘と共に魔法を研究し
ながら暮らしていた。
そしてナポリ王に同行していた王子が王たちとは離れて島に
辿り着き、そこで王子は魔法使いの娘と出会うが…
主人公の魔法使い役には、2010年12月紹介『RED』などの
ヘレン・ミレンが扮する。デイムの称号も持つイギリス出身
のオスカー女優が、本来は男性であるシェークスピアの主人
公を実に楽しげに大芝居で演じているものだ。
共演は、2008年11月紹介『寝取られ男のラブ♂バカンス』の
ラッセル・ブランド、2010年初演されたテイモア監督のステ

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05月01日(日)
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