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On the Production
by 井口健二
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■名前のない女たち、半次郎、超強台風、ヌードの夜、蛮幽鬼、武士の家計簿、玄牝+製作ニュース・他
再見すると1度目より深い思いのする作品だった。
『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』
1980、90年代に『天使のはらわた』シリーズで人気を博した
劇画作家出身の石井隆監督が、1993年に発表した映画作品の
『ヌードの夜』から17年ぶりに製作された続編。竹中直人が
前作と同じ何でも代行屋の紅次郎を演じる。
物語は、保険金詐欺が発覚し相手の男を殺してしまった母親
と娘2人の一家が、その男を解体して富士の樹海に捨てたの
が発端。ところが一緒に男のロレックスを投棄してしまい、
見付かれば製造番号から足が着くと考えて末娘がそれを探す
羽目に陥る。
そこで末娘は紅に一緒に探すことを依頼するが、末娘が負傷
して同行しなかった日に紅は血塗れのロレックスを発見。そ
の様子に疑問を感じた紅は、そのロレックスを知り合いの女
性刑事の安斎に調査してもらう。
その後、紅は安斎から戻されたロレックスを末娘に渡し、そ
の仕事は完了する。ところが末娘は、続けて昔世話になった
女性を探してくれと紅に依頼。そしてその依頼は、紅を怪し
げな裏の世界へと導いて行く。
一方、ロレックスに付着していたのが人肉との報告を受けた
安斎は、密かに紅に携帯電話を持たせ、彼の動向を監視し始
めるが…
紅は前作でも女の情に絆されて殺人の濡れ衣を着せられそう
になるが、本作でもその展開はほぼ同じ。ただし前作の経験
から紅の方も多少は考えを巡らせているのだが…、それでも
巻き込まれてしまうのが、紅=男のサガという捉え方のよう
だ。
出演は、末娘役にグラビアアイドルの佐藤寛子が扮する他、
過去の石井作品でヒロインを務めた大竹しのぶと井上晴美が
母親役と姉役を演じている。特に佐藤は、題名通りの体当た
りの演技を見せている。他に宍戸錠、津田寛治、旧真中瞳の
東風万智子らが共演。
脚本は10年ほど前に完成していたのだそうで、その脚本を竹
中に送ったが、なかなか応えてもらえなかったそうだ。それ
が約10年目に竹中側からコンタクトがあり、同時に角川映画
のプロデューサーが興味を持って製作が実現したとのこと。
石井監督にとっては正に念願の映画化になったようだ。
それから、これは物語には直接関係しないが、映画の中でチ
ラリと映る調書で紅の本籍地が神奈川県平塚市になっていて
びっくり。監督は宮城県出身のはずだが、何でそんな住所を
選んだんだろう?
『蛮幽鬼』
昨年12月紹介『蜉蝣峠』と同じ「劇団☆新感線」によるゲキ
×シネ作品。本業は双葉社の編集者という劇団座付作家中島
かずきによる脚本から、劇団主宰のいのうえひでのりが演出
した舞台をHD撮影により再現している。
10年間、異国の監獄島に囚われていた男が脱獄に成功する。
目指すは自分を陥れた男たちへの復讐。その思いを胸に帰国
した男を待っていたのは、国の中枢で権力を揮う自分を陥れ
た男たちの姿と、唯一つの希望だった昔の婚約者が国王の妃
となっていた姿だった。
こうして陥れた男たちだけでなく、昔の婚約者や国王、国家
をも復讐の対象とした壮絶な男の復讐劇が開幕する。
これに、主人公を助けるいつも笑顔のまま人を殺す希代の殺
し屋や、主人公と行動を供にする南の島の王女、さらに国家
の体制を左右する宗教の存在や国の中枢での権力争いなどの
要素が絡まって、壮大なスケールの物語が展開される。
いや、物語の発端では単純な復讐劇かと思って観ていると、
劇の後半ではこれが国の問題にまで発展し、さらに真に陰謀
を図った者の存在など、驚くほど壮大な物語になって行く。
そして…結末には思わず胸を打たれてしまった。
主演は、本作で作品賞と共に演劇雑誌の2009年度チャートで
第1位に輝いたという上川隆也。共演は稲森いずみ、大衆演
劇の早乙女太一、それに堺雅人。他に橋本じゅん、高田聖子
ら「劇団☆新感線」のメムバーが脇を固めている。
以前の『蜉蝣峠』では群舞の迫力が見事だったが、本作の見
所は壮絶な殺陣。これも一種の群舞ではあるが、かなり高速
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08月08日(日)
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