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On the Production
by 井口健二
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■ユキとニナ、フォース・カインド、サロゲート、パレード、Dr.パルナサスの鏡、抱擁のかけら、作戦、バニッシング・ポイント
しげな仕事をしているらしいことも話題に挙がってくる。そ
んな世間との関わりも含めた若者たちの生活ぶりが描かれて
行く。
そしてその若者たちを、藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、
小出恵介、そして林遣都という最近よく観る、多分、今一番
旬な若手俳優たちが演じている。特に林と小出は、『風が強
く吹いている』に続いて共演作を観たものだ。
僕の中での『きょうの…』との違いを言えば、物語に違和感
がなかったことかな。物語的には本作の方が奇抜なところも
あるのだが、お話としてこの方が納得できる感じがした。若
者のモラトリアムという点では、僕も大人の目で観るように
なったのかも知れない。
正直、最近の若者というのは特に付き合いもないし、よくは
判らないものだが、これはこれでありそうな話という感じの
ものだ。それに登場する俳優たちの演技も、最近よく観る顔
ぶれのせいか、何となく親しみもあって良い感じだった。
それに、映画の中で主人公の1人が挙げる一番好きな映画の
題名が…。これは原作にもあるものなのだろうか。
『Dr.パルナサスの鏡』
“The Imaginarium of Doctor Parnassus”
『未来世紀ブラジル』などのテリー・ギリアム監督による最
新作。
主演のヒース・レジャーが撮影半ばで急死したことから、一
時は完成の危ぶまれた作品を、ジョニー・デップ、コリン・
ファレル、ジュード・ロウの協力により、それぞれがその役
柄を引き継いで作り挙げた。
物語の中心は、人間の心の中の欲望を具現化してみせる装置
「イマジナリウム」。その装置を操る博士は悪魔との契約で
その装置を使い人間を「獲得」しなければならないのだが、
現代のロンドンには不似合いな馬車で引かれた装置にはなか
なか人も集まらない。
そんなとき、橋から吊るされていた1人の男が博士たちの一
座に救われ、その男トニーの活躍で人間の「獲得」にも目処
が付き始めるが…
この現実世界でのトニーをレジャーが演じて、装置の中での
それぞれの人物の願望によるトニーの姿を、デップ、ファレ
ル、ロウが演じて行く。それは物語上での違和感はないもの
だったが、一々顔が変ったことを強調するのはちょっと意識
し過ぎかな。まあそれも仕方はないが。
そしてその装置の中では、それぞれの人間の願望に従った異
様な世界が展開される。それはその願望の主が子供であれば
子供なりだが、それが熟年の女性であったりすると…そこか
らが『バロン』なども髣髴とさせるギリアムワールドの展開
となって行く。
いやそれ以前に、薄暗いロンドンの街角に登場する4頭立て
の馬車に載せられた巨大なイマジナリウムの舞台装置が、す
でにギリアムワールドそのものにもなっているものだ。
因に脚本は、『未来世紀…』『バロン』以来となるチャール
ズ・マッケオンとの共同で執筆されたオリジナル。そこには
いろいろなことが思い通りに行かない監督自身の心情が、ク
リストファー・プラマー演じる博士に投影されているとも言
われている。
共演は、イタリア・ヴォーグ誌などのトップモデルでもある
リリー・コール、『ブーリン家の姉妹』などのアンドリュー
・ガーフィールド、『オースティン・パワーズ』のミニ・ミ
ー役で有名なヴァーン・トロイヤー、『フィッシャー・キン
グ』にも出演した作曲家歌手のトム・ウェイツ。少々癖のあ
る顔ぶれが作品を支えている。
製作時の経緯が作品の宣伝にもなるだろうが、それ以上に本
作は完成された作品自体が、ギリアム監督のファンには最高
の贈り物と言えるものだ。
『抱擁のかけら』“Los arrazos rotos”
2003年2月紹介『トーク・トゥ・ハー』などのペドロ・アル
モドヴァル監督による2007年2月紹介『ボルベール』
以来の新作。
主人公のマテオは元映画監督。しかしある事情から盲目とな
り、その後はペンネームだったハリー・ケインを名告ってい
る。そんな主人公の許に、映画監督志望の若者が訪れること
から物語は動き始める。
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11月15日(日)
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