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On the Production
by 井口健二
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■クリスマス・キャロル、理想の彼氏、THIS IS IT、釣りバカ日誌20、キャピタリズム、いぬばか、ジュリー&ジュリア、2012
ただまあ、世界不況の現状は避けては通れなかったようで、
それによる社会的な暗い話題も登場してしまうのは致し方な
いものだが、出来たらもっと華やかにフィナーレを飾りたか
った…そんな気持ちは察せられるところだ。
出演は、西田敏行、三国連太郎、浅田美代子、中本賢、奈良
岡朋子、笹野高史らのレギュラー陣に加えて、今回は松坂慶
子、吹石一恵、平田満、角替和枝、六平直政らがゲスト出演
している。
ところで、前作を観ていたときに映画の主題曲が何となく気
になっていたのだが、今回観ていて映画の後半に突然ラテン
の名曲「シェリトリンド」の替え歌が登場してびっくり、主
題曲は正にそれだったようだ。
そしてその曲を中心にミュージカル仕立てになったのも驚き
で、それは極めて泥臭くなるように演出されているのだが、
その洒落気にも驚かされた。それからエンディングの背景に
は、「納竿」という監督の書が登場。最後までしっかりと観
させてくれたものだ。
『キャピタリズム』“Capitalism: A Love Story”
『ボウリング・フォー・コロンバイン』などのマイクル・モ
ーア監督による『シッコ』以来2年ぶりとなる新作。本作で
は2008年9月15日に起きた投資会社リーマン・ブラザーズの
経営破綻を中心に、アメリカが信奉するキャピタリズム(資
本主義)の本質を炙り出す。
アメリカンドリームという言葉に象徴されるように、この国
では金(資本)を持つことが成功の最高の目標とされ、資本
の獲得が全てに優先される。それは経済弱者からの収奪を促
し、貧富の差の拡大を誘導する。
そんなアメリカ社会の現状が、特にブッシュ政権末期に襲っ
たリーマンショックの状況から、オバマ当選までの時間の中
で語られて行く。
そこにはまた、自宅住居を銀行に差し押さえられて路頭に迷
う人々や、知らない間に会社が受取人の生命保険を掛けられ
ていた従業員の話など、日本でも見られそうな状況も多々描
かれているものだ。
実際に僕自身が以前に勤めていた会社では、会社が受取人の
生命保険を掛けられていて、いくら何でもそれは退職したと
きに解約されたと信じたいが、当時僕が死んだらその会社に
保険料が支払われる状況にいた。従って僕自身には、かなり
身に染みる内容で真剣に観ざるを得ない作品だった。
ただしそれをモーア監督は、特にレーガン、ブッシュと続く
共和党政権を標的として皮肉を込めて描いており、そこには
アニメーションなども登場して笑わせてくれている。このた
め僕が鑑賞した試写会では笑い声もかなり挙がっていたが、
手を胸に置いて考えるとあまり笑ってばかりもいられないと
思わせる作品だった。
元々モーア監督は、最初に評判を取った『ロジャー&ミー』
の時から資本主義に対する疑念を追求してきたもので、それ
が再び原点に戻っての本作となっている。そのため本作では
1980年発表の作品との対照も行われているが、状況は変って
いないばかりかさらに悪化しているように観えるのは恐ろし
いところだ。
そしてその疑念が、本作ではオバマ当選によって払拭される
かのように描かれているのも心配なところで、それは日本人
にとっても同様の状況にあるようにも感じられた。
『いぬばか』
2004年に週刊ヤングジャンプで連載が開始され、現在は月刊
で連載が続いている桜木雪弥原作コミックスの映画化で、テ
レビのヴァラエティ番組などに出演しているスザンヌによる
映画初主演作品。
バカが付くほど犬好きの女性が実家には書き置きを残しただ
けで愛犬を連れて上京。ところがその愛犬がいきなり他の犬
に交尾して、交尾された側の飼い主は大慌て。その飼い主は
ペットショップの店長で、彼女はそのペットショップに勤め
ることに…というお話。
何ともまあ安直な展開だが、ただしこの作品には、ペットを
飼うことに対する人間の責任やペットロスの問題なども描か
れていて、それなりに問題意識も持って作られている作品で
はあったようだ。
因に本作の映画化には、日本の動物保護団体では初めてイギ
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11月01日(日)
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