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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション部門(2)+まとめ
このため行き場を失ったホセはローザの住み込む邸宅に忍び
込み、ローザにも知られないまま家人が登ることも希な3階
の部屋に隠れるのだが…。それは見付かったらローザにも被
害が及ぶ可能性もある危険な行為だった。
こうして一つ屋根の下に居ながら逢うこともできない2人の
生活が始まるが、電話で話をするなど、最初はうまく立ち回
っていたホセも徐々に居る場所がなくなり、危険な目にも逢
い始める。
同じデル=トロ製作では、昨年9月に紹介した『永遠のこど
もたち』もリアルな中にファンタスティックな雰囲気が漂う
不思議な作品だったが、本作でもそれに通じる感覚を得るこ
とが出来る。
脚本監督は、エクワドル出身のセバスチャン・コルデロ。物
語には原作があるようだが、漂うようなカメラワークなど映
像的にも優れた作品だ。因に監督の母国のエクワドルにはほ
とんど映画産業と呼べるものがないのだそうだ。

『永遠の天』
1992年から2000年代末までの変化を続ける中国を背景に、人
の愛を信じられない女性の真実の愛情を求める遍歴を描いた
作品。
物語の始まりは、レスリー・チャンが『覇王別姫』の撮影を
終えた頃のこと。11歳の少女の母親が家出をし父親が亡くな
る。その少女のそばには1人の少年がいたが、その少年も両
親の離婚で母親に連れられて去って行く。
そして少女は母親の親族の家に引き取られ、その家の息子か
らは姉のように慕われるが、その家でも父親の浮気で母親が
家出をし浮気相手が後妻としてやってくる。そんな一家の中
には愛情が芽生えない。
そんな人の愛を知らないまま育った少女が、それでも最初に
一緒に居てくれた少年の姿を追い求め…。しかしそこでも相
手からの愛を信じられない少女の苦悩が続いて行く。
先に紹介したイタリア映画の『テン・ウィンターズ』と同様
に、本作ではさらに長い期間の愛の遍歴が描かれる。しかも
本作ではその間に、北京オリンピックの招致や開催、映画ス
ターの自殺やSARSの蔓延などの歴史的な事件が彩りを添
えて行く。
イタリア作品がこのような歴史を背景にしなかった分、本作
では興味を引かれるかとも考えたが、ここに描かれる歴史的
事実のそれぞれが中国に特化される事象でもあり、僕には興
味を沸かせるほどにはならなかった。
そして物語は、その歴史を背景にしている分、波乱万丈なと
ころもあるのだが、それには多少行き過ぎに感じる部分もあ
り、かえって絵空事になって僕には真剣に取れない物になっ
ていた。
脚本監督は16歳で作家デビューを果たしたという女流のリー
・ファンファン。何となく日本のケータイ小説の映画化を観
ているような気分になったのは、その基が同じような世代の
作家の手になるせいだろうか。それを支持する日本の観客に
は受けるのかな。

『マニラ・スカイ』
フィリピンで起きた実話に基づくとされる社会に翻弄された
男性の姿を描いた作品。
プロローグは田園の道を歩いてくる男性の姿。その男性は学
校に行きたいせがむ息子に対し、「マニラの叔父さんの家に
行きそこから学校へ通え、そしてここへは帰ってくるな」と
言い渡す。
そしてマニラの街角、1人の男が港湾の荷役労働らしい職場
で監督官と言い争っている。彼の父親が病気が金が必要にな
り、収入の良い海外出稼ぎの登録に行きたいのだ。しかしそ
のために職を休んだら、次の職はないと告げられる。
それでも登録にやってきた男だったが、書類の不備でなかな
か受け取ってもらえない。そして路頭に迷った男は、俄作り
の強盗団に加わってしまうのだが…
フィリピン人の海外出稼ぎは、労働基準の厳しい日本以外の
韓国や中国では重宝がられていると聞くが、男が行く登録場
には如何にもそんな雰囲気の行列が出来ていた。しかし物語
はそれだけでは終わらないのだ。
脚本監督撮影は、フィリピンのインディーズ映画のパイオニ
アとも称されるレイモンド・レッド。フィリピン民衆の現状
をしっかりと見据えた物語が展開される。しかもここから先

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10月17日(土)
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