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On the Production
by 井口健二
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■アバンチュールはパリで、2012(特別映像)、アニエスの浜辺、わたし出すわ、イメルダ、ウォッチャーズ、虫皇帝、プール
アンチテーゼのような意味合いは在りそうな感じの作品にな
っている。
とは言うものの、登場する金を貰った人々の行動がかなりス
テレオタイプな感じなのは解せないところで、確かにそれは
現代を反映したものではあるが、もう少しその辺に捻りがあ
っても良かった感じはした。もっともそれが狙いという感じ
もしないではないが。
それに対してこの作品の最大の捻りは主人公の女性の方にあ
るのだが、それに関して僕はかなり心地よい感じで映画を観
終えることができた。ただまあこれが一般の映画ファンにど
う受け取られるかは心配なところではあるが…
主演は、『ラスト・ブラッド』『カムイ外伝』に続いて出演
の小雪。前の2作はそれぞれポストプロダクションに時間が
掛かったようで、今年それが一気に出てしまったものだが、
本当に良く頑張っている感じだ。
共演は、2006年『TANNKA』の黒谷友香、2008年『空へ』の井
坂俊哉、2009年『空気人形』の山中崇、2006年『雪に願うこ
と』の小澤征悦、2008年『あの空をおぼえている』の小池栄
子。他に、仲村トオル、ピエール瀧、藤田弓子、加藤治子、
永島敏行らが登場する。
映画では、高校時代のエピソードがディスプレイ表示のよう
な文字列で紹介されるなど、13年前の作品を髣髴とさせると
ころもあり、その監督の指向の先にあるものをもっと観たく
なる感じもした。
『イメルダ』“Imelda”
1986年に失脚した元フィリピン大統領の妻で、失脚後に一般
公開された大統領官邸マラカニアン宮殿に残された3000足の
靴、2000着のドレスなどで話題を撒いたイメルダ・マルコス
の半生を、本人の証言を許に追ったドキュメンタリー。
1929年にマニラで生まれ、第2次大戦後に進駐した米兵の前
で歌っているところを司令官マッカーサーに認められ、当時
フィリピンを訪れた作曲家アーヴィング・バーリンの前で学
校で教えられた英語の歌“God Bless Pilipinas”を歌った
ところバーリンに歌詞を直してもらったという逸話から始ま
る1人の女性の物語。
その後に国会議員だったマルコスと出会い結婚し、やがて大
統領夫人に。その半生は裕福な環境に恵まれ、貧困に喘ぐフ
ィリピンの一般民衆とはかけ離れたものだが、それでも本人
は貧困と闘い、民衆の生活の向上に努めたと言い切る。
しかし、彼女自身がマニラ首都圏知事に選出されたり、彼女
のために作られた居住環境省大臣なる役職で成し遂げたこと
は、靴やドレスと同様に民衆の生活実感からはかけ離れ、た
だ国の内外に無私無欲をアピールするためでしかなかった。
そんなイメルダの半生記だが、作った監督本人がイメルダに
心酔しているのかあまり批判的なものではなく、その辺には
多少の違和感を覚える。それでも真実というのは力のあるも
ので、そんな描き方でも不正の事実ばかりが浮かび上がるの
は面白いところだ。
それらが、イメルダの親族や子供時代の友人、マルコス政権
下で拷問を受けたと証言するジャーナリスト、当時の駐比ア
メリカ大使スティーヴン・ボスワース、当時の東アジア・太
平洋問題担当補佐官リチャード・ホルブルックらの証言と共
に紹介される。
そんなイメルダは、元大統領の死去後は帰国を許され、本人
の政界再進出は訴訟の問題に阻まれたが、息子や娘は政界に
進出、現在もその威勢を保っているとのことだ。それを国民
性とするのは簡単だが、それは日本でも対して変わらない民
衆の姿だろう。
なお、最初の作曲家のエピソードで、字幕ではバーリンとだ
け記されファーストネームが削除されていた。アメリカの作
曲家など日本の観客には無意味という判断かも知れないが、
“God Bless America”だけでなく、『ジャズ・シンガー』
や『ホワイト・クリスマス』も手掛けた作曲家は、日本では
アーヴィング・バーリンのフルネームで認知されているはず
のもの。これはちゃんと表記して欲しかった。
『ウォッチャーズ』“Homecoming”
スポーツで優秀な成績を残し、故郷に錦を飾ることになった
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07月26日(日)
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