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On the Production
by 井口健二
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■路上のソリスト、チャンドニー・チョーク、エンプティー・ブルー、ジャイブ、ヴィニシウス、テラー・トレイン、Sing for Darfur
のだが、それをわざわざ調べなくてはならないのはどうした
ものだろう。作品はそれが判っている人だけを対象にしたも
のとは思えないのだが。
それはともかくとして映画は、追い風の中を一所懸命に走り
続けてきた男性が、ふと自分が独りぼっちになってしまって
いたことに気付き、そこからの方向転換による再生を描いた
もので、それなりに現代人の共感は得られそうな内容だ。
ただしそこには、北方領土の問題など、社会的な要素も織り
込まれており、それはそれとして興味深くも観られる作品に
なっていた。まあ、海に関係する北海道民なら避けては通れ
ない問題なのかも知れないが。
出演は、石黒賢、清水美沙、上原多香子。他に、六平直政、
北見敏之、大滝秀治、加賀まりこ、津川雅彦らが脇を固めて
いる。
上にも書いた地元の祭りの様子や、他にも不思議な雰囲気の
漂う炭坑の跡地など、ちょっとした観光気分の味わえる作品
にもなっていた。

『ヴィニシウス』“Vinicius”
「イパネマの娘」などの世界的ヒットで知られる作詞家で、
詩人、劇作家でもあったヴィニシウス・ヂ・モライスの生涯
を描いたドキュメンタリー作品。
1913年にリオデジャネイロの中流家庭に生まれたヴィニシウ
スは、大学では法律を修めて外交官となる一方、1956年に戯
曲“Orfeu da Conceicao”を創作。このときアントニオ・カ
ルロス・ジョビンと出会う。そして1958年、ギタリストのジ
ョアン・ジルベルトの参加を得て「想いあふれて」を発表。
これがボサノヴァの夜明けとなったと言われている。
因に、1956年の戯曲はフランスのマルセル・カミュ監督によ
って『黒いオルフェ』として映画化され、1959年のカンヌ映
画祭でグランプリを獲得したものだ。
そして1962年、ジョビンと共に「イパネマの娘」を発表。世
界的な名声を得て行くことになる。その後、2人はコンビを
解消するが、ヴィシニウスはさらにアフロ・サンバなどの新
たな音楽ジャンルを生み出すと共に、1980年に亡くなるまで
に400曲以上の作詞を手掛けたと言われている。
そんなヴィシニウスは、酒と女をこよなく愛し、生涯に9回
の結婚をしているが、最後まで本当に愛していたのは最初の
妻であったとか、ブラジルの外務省は彼の音楽活動は認めた
ものの、常にスーツとネクタイの着用を要求したなど、彼の
生涯を彩るいろいろなエピソードが語られて行く。
それらのエピソードは、当時のヴィシニウスが語る実際の映
像や、遺族や友人たちへのインタヴュー、さらに追悼式とし
て舞台で演じられた朗読劇などを通じて綴られたもので、そ
れらが見事な構成で纏められている。
また本作では、ヴィシニウスが手掛けた数々の楽曲の演奏が
いろいろな形で行われるのも聞き物で、「イパネマの娘」以
来のボサノヴァを聞き親しんできた自分には、全てが懐かし
く聞くことができたものだ。
それにしても、最初は学識も高く政治意識も高いヴィシニウ
スが、後半生は唯のヒッピーになっているというのも愉快な
話で、そんな男の生涯が、憧れを感じてしまうほどに実に楽
しそうに描かれていた。

『テラー・トレイン』“Train”
1999年のアカデミー賞で作品賞など5部門受賞の『アメリカ
ン・ビューティー』に出演。ケヴィン・スペイシーの娘役を
演じていたゾーラ・バーチが主演するホラー作品。
レスリングの国際大会で東欧を訪れていたアメリカの大学生
が、次の試合地に向かうため乗り合わせた列車内で恐怖体験
に見舞われる。
バーチが扮するアレックスら4人の選手は、リトアニアでの
試合の後、ホテルを抜け出して異国の夜を満喫する。しかし
度を過ごして翌朝の集合に遅刻、彼らに同行したコーチ及び
彼らを待っていた監督と共に次の列車で他のチームメイトを
追うことになる。
ところが彼らが乗ったのは、ちょっと乗務員たちに異常な雰
囲気の漂う列車だった。それでも車内で遊びに興じていた彼
らに恐怖の出来事が襲いかかる。そしてその出来事の背景に
ある真の目的とは…

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03月29日(日)
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