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On the Production
by 井口健二
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■それでも恋するバルセロナ、お買いもの中毒な私!、アルマズ・プロジェクト、人生に乾杯!、ザ・スピリット、群青
の名車チャイカで出掛けて行く。その向かった先は郵便局の
窓口、そこで老人はピストルを見せ静かに現金を要求する。
犯人は高齢者、しかも乗っているのはクラシックカー。こん
なに目立った犯罪者に、警察は直ちに犯人を特定して逮捕に
乗り出すのだが…という物語に、浮気がばれて仲が険悪にな
っている男女の刑事や、今も元気なキューバからの移住者な
どが加わって、ユーモラスな、そして心に染みる物語が展開
される。
ペンションというのが年金のことで、年金生活者が引退後を
悠悠自適に暮らす姿だと教えられたのは随分と昔になるが、
その頃は自分も老後にはそんな生活者になれると信じていた
ものだ。
しかし現実はそう甘くはなかった訳で、永年天引きで強制的
に取り上げられていたお金は何処に消えてしまったのか。政
府を信じて納め続けてきたサラリーマンの老後はどうしてく
れるのだ…と言いたくなるのは僕だけではないだろう。
そんな生活困窮者が犯罪に走るというのは、いかにも短絡的
な物語だが、それでも納得して共感してしまう現状は、国家
としてかなり恐ろしい状態にあるとも言えそうだ。とは言え
今の政権では、政府の無策は変らないのだろうが。
映画では、華麗に走り回るチャイカの雄姿や意外な能力など
も楽しめて、クラシックカーファンにも喜ばれそうだ。
『ザ・スピリット』“The Spirit”
1940年から続くアメリカンコミックスを、2005年『シン・シ
ティ』ではロベルト・ロドリゲスとの共同監督を務めたアー
ティストのフランク・ミラーが、初めて単独で監督した映画
作品。
ミラーは、『バットマン』のグラフィックノヴェル化などで
アメコミを現代的に改革した立て役者とも言われるが、製作
者として参加した『300』の映画化でも、グラフィックノ
ヴェルの映像感覚をCGIによってスクリーンに再現するこ
とを成功させた。
そのミラーが初の単独監督に選んだのは、敢えて自作ではな
く、1940年にウィル・アイズナーによって創造された新聞コ
ミックスの映画化。因にこの原作は、当時は日曜日の別刷り
付録としてタブロイド版16ページが、全米で毎週500万部発
行されていたとのことだ。
物語は、スピリットと名告るスーパーヒーローを主人公にし
たものだが、この主人公には特殊な超能力はなく、ただ死な
ないというだけ。そのため平気で銃に向かったり、高所から
飛び降りたりの無茶をしながら悪漢を倒すとことになるが…
何か微妙な能力だ。
しかも重傷を負った彼の身体を修復する女性外科医とのやり
とりや、敵役にも同じ能力の奴がいて2人が出会えば必ず死
闘が始まる戦いが始まるといった定番の展開があり、その雰
囲気は旧来のアメコミの感覚でもある。
ただし本作は、そのアメコミ感覚も含めて見事な映像化が行
われているもので、『シン・シティ』『300』での試みを
さらに1歩進めた作品とも言えそうだ。また本作では、当初
からPG−13での公開を目標にしており、その描写も慎重に行
われているようだ。
主人公を演じるのはガグリエル・マクト。2004年『ママの遺
したラヴソング』などの出演はあるが、大作の主演は初めて
という俳優。その脇を、エヴァ・メンデス、サラ・ポールス
ン、パズ・ベガ、スカナ・カティック、スカーレット・ヨハ
ンソンらの女優と、敵役にはサミュエル・L・ジャクスンが
配されている。
『シン・シティ』と同様の版画のような白黒画面にネクタイ
だけが赤く色付けされたり、その他にもアメコミの画を髣髴
とさせる映像が随所に表現される。また、使い捨てのクロー
ン人間など微妙なギャグもいろいろ登場。俳優たちの演技も
楽しそうだし、それらを纏めて気楽に楽しみたい作品だ。
『群青』
沖縄県の離島を舞台に、海の恩恵を受けながらもその海に愛
するものを奪われる。そんな人々の生活を描いた作品。
主人公は故郷の島に1年ぶりに帰ってくる。その島には、幼
い頃から一緒だった同い年の男女も暮らしていた。しかし今
は、その女性だけが暗い顔で海岸に佇んでいる。そんな彼女
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03月22日(日)
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