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On the Production
by 井口健二
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■風の馬、This Is England、四川のうた、シェルブールの雨傘、7つの贈り物、ハリウッド監督学入門、ロシュフォールの恋人たち
フランスの湊町シェルブールを舞台に、世情に翻弄される若
者の愛が全篇を歌だけの構成で演出されている。
日本でも1964年に公開されている作品だが、僕自身は同じ顔
ぶれの『ロシュフォールの恋人たち』と2本立てで名画座で
観たものだから1967年以降、多分大学に入ってから1970年前
後のはずだ。それでもまあ40年振りぐらいの再見となった。
台詞がすべて歌になっているという構成は、オペラなどでは
当たり前のものだが、当時の映画で、しかもオリジナルとい
うことでは斬新だったのかな。それに衝撃的な結末も高い評
価に繋がったものと言えそうだ。
でもそれを今見直していると、僕自身にはドヌーヴが演じる
ヒロインの身勝手さがかなりきついものにも感じられた。多
分昔は自分も純真で、それでも感動したのだろうが、今では
身籠もって3ヶ月で他の男に魅かれて行く女ってどうなの…
という感じだ。
その背景にはアルジェリアでの戦争があって、それに翻弄さ
れる男女の姿ではあるが、当時の自分の中にそれほど重くア
ルジェリアのことがあったとは思えない。もちろんフランス
本国での評価はそこにもあるのだから、それはそれで正当な
ものだが…
因に今回の再上映は、ディジタルリマスターにより行われる
もので、フィルムの傷なども修復されて実に観やすくなって
いる。ただし色彩が鮮やかになり過ぎている感じはあって、
特に赤い部分が浮き上がっていたり、白壁にモワレが出てい
る感じの部分もあった。
とは言え、1943年生まれ、撮影当時20歳のドヌーヴは、特に
前半では正しくフランス人形のように可憐で愛らしく、その
美しさは存分に楽しめる。それがこんなことをしてしまうな
んてという展開は、当時は本当に衝撃だったものなのだ。
若い頃に感じた感動を、年齢を経てから再び得るのは難しい
ことなのかも知れない。特にラヴストーリーは、初な自分と
擦れた自分が違ったものを見せてくれるようで、その落差も
衝撃になってしまうようだ。
やはりこういう作品は、若いうちに観ておくべきものなのだ
ろう。

『7つの贈り物』“Seven Pounds”
2006年『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督と、
ウィル・スミスが再び組んだ感動のドラマ。
アメリカ財務局の徴税官の男がいろいろな人物の人柄を調べ
ている。彼のメモには多数の名前が列記されているが、彼は
調査の結果で問題ありと判断した人物の名前を削除している
ようだ。そして彼には大きなトラウマの陰も見え隠れする。
そんなメモに残る1人が、エミリーという名の若い女性だっ
た。彼女は古典的な凸版印刷機を使って招待状などの印刷を
請け負っているが、体力のいる仕事は難しくなっているよう
だ。そして犬の散歩中に倒れてしまう。
そんな彼女に接近する主人公だったが、最初は厳しい調査の
はずだった彼の心は、懸命に生きようとする彼女の姿に徐々
に魅かれて行ってしまう。しかしそれは、彼に究極の選択を
迫るものだった。
正直に言って、現実にはかなり困難な物語のように思える。
確かに制度の発達したアメリカでなら可能なのかも知れない
が、それにしても情報にはセキュリティもあるだろうし、適
合の問題など、そんなに簡単にはリストの作れるものでもな
いだろう。
トップクラスの大学を出た人間ならそれも可能ということな
のかも知れないが、それは逆に彼の最後の選択に繋がらない
ようにも感じてしまう。それほどの人間ならもっと他にやる
べきことがあるのではないか、そんな感じもしてしまうとこ
ろだ。
でもまあこれが現実ということなら、それはそうとしか言い
ようがないのだが…
共演は、エミリー役に『シン・シティ』などのロザリオ・ド
ースン。他に『俺たちダンクシューター』のウッディ・ハレ
ルスン、『父親たちの星条旗』のバリー・ペッパー、『バー
バーショップ』のマイクル・イーリーらが脇を固めている。
なお、映画の中には素敵な手動の凸版印刷機と、他にもオフ
セット印刷機なども出てきて見事な動きを見せてくれる。エ

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01月18日(日)
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