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On the Production
by 井口健二
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■ジェイン・オースティンの読書会、アクエリアンエイジ、あの空をおぼえている、美しすぎる母、フィースト、覆面ダルホ、ひまわり、泪壺
母親の名前はバーバラ。ボストン近郊のあまり裕福ではない
家庭に生まれた彼女は、10代の頃に父親の自殺や兄弟の事故
死にも遭遇するが、後にはニューヨークの最も美しい10人の
女性の1人と呼ばれるようになる。そしてベークランド家の
跡取りであるブルックスと結婚する。
しかし、美しく、カリスマ性もあったと言われる女性も、身
分の差には勝てなかった。それでも彼女はベークランド家の
資産を利用して上流社会での生活を続ける。その生活ぶりは
優雅だったが、家庭内では夫との愛は冷えきり、息子のアン
トニーを溺愛するしかなくなって行く。
そのアントニーは、幼い頃は自信に満ちた理想的な少年だっ
が、やがて両親の間が冷えるに従って母親からは溺愛される
一方、父親からは軽蔑の眼差しで見られるようになる。そし
てドラッグに溺れ、同性愛の世界へと逃げ込んで行く。
この物語が、実際に一家が暮らしたニューヨーク、パリ、ス
ペインのカダケス、マジョルカ、そしてロンドンを背景に描
かれる。
身分差のある結婚など、何時の世にも普通に在りそうなもの
だが、この映画によると夫のブルックスにも偉大な発明家で
あった祖父に対するコンプレックスがあり、それが一家の崩
壊を助長していったようにも描かれている。物語は原作者の
調査の結果であり、それがすべて真実とは限らないが、結局
はそんなところなのだろう。
出演は、バーバラにジュリアン・モーア、アントニーにエデ
ィ・レッドメイン。また父親ブルックス役をスティーヴン・
ディレイン、アントニーの友人役をヒュー・ダンシーが演じ
ている。
監督は、1992年に『恍惚』という作品が評価されたトム・ケ
イリン。長編作品はそれ以来の第2作。因に今回の映画化で
は、原作の本に添えられた一家の写真を参考に製作を進めた
とのことで、これがセットや衣装だけでなく、演出の面でも
かなり重要視されたそうだ。
『フィースト』“The Feast”
2004年8月1日付第68回でも紹介したProject Greenlightか
らの映画化作品。
Project Greenlightは、元々はアカデミー賞脚本賞を受賞し
たベン・アフレックとマット・デイモンが提唱した新人発掘
プロジェクトで、ここからは2003年4月に紹介した『夏休み
のレモネード』が第1回作品として誕生している。
そのプロジェクトの第3弾として製作されたのが今回の作品
だが、上記のページでも紹介しているように、今回は初めて
ホラー作品が選ばれたものだ。しかもスプラッター。第1回
のヒューマンドラマとはえらい違いだが、それも映画という
ところだ。
物語は、荒野に面した地元の溜まり場のような酒場が舞台。
そこに傷を負った男が現れ、男はその場所に危険が迫ってい
ることを告げる。最初は半信半疑だった客たちも、男が持参
した恐ろしげな怪物の頭部を見て騒ぎ出すが、その直後に怪
物が襲ってくる。
映画は、登場人物のそれぞれに字幕でキャラクター設定を添
える形式で始まるが、ここから後は何しろ脚本家たちが過去
のホラー映画を研究して、今までなかった展開を見せること
に専念したというだけあって、かなり予想外に進められて行
くことになる。
そこには、かなりセオリー無視のものもあるが、それなりに
この手の映画を見続けてきた者にとっては、結構笑えるとい
うかニヤリとしてしまうものにもなっている。と言っても、
結局はスプラッターの面白さと言うことにはなるのだが…
それにしてもこれだけのスプラッターも久しぶりで、最近の
ホラー映画がちょっと技巧に走りすぎたり、VFXなどの技
術にも頼りすぎていた部分も考えると、それなりに初心に還
るというか、そういう面白さは感じられたものだ。
出演者に、『エイリアス』のバルサザール・ゲティ、『グレ
イス・アナトミー』のエリック・デイン、『THE OC』
のナヴィ・ラワットなどテレビの人気者が顔を揃え、さらに
クルー・ギャラガー、デュエイン・ウィティカーらのベテラ
ンが脇を固める。因に監督は、ギャラガーの息子だそうだ。
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02月17日(日)
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