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On the Production
by 井口健二
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■ウォーター・ホース、団塊ボーイズ、クリアネス、君のためなら千回でも、シスターズ、東京少年、NEXT
公2人の行動などは意外としっかり描かれていた。
『君のためなら千回でも』“The Kite Runner”
“Bond 22”も担当している『ネバーランド』などのマーク
・フォースター監督作品。イスラム革命前後のアフガニスタ
ンを舞台に、アメリカに亡命した富裕層の息子と、彼の家の
召使の息子との交流と確執を描く。
主人公は、母親を誕生の時に亡くし、それからは厳格な父親
のもとで育てられたが、父親は周囲からも人望を集める人物
で、家庭環境も裕福だった。そして家には、父親と生涯を共
にしてきた召使がいて、その召使の息子は彼の親友とも呼べ
る存在だった。
主人公は幼少の頃から物語を書くのが好きで、召使の息子は
それを読み聞かせてもらうのが好きだった。しかしその関係
は、結局主従の関係でしかなかったのか…主人公の裏切りに
よって2人の絆は失われてしまう。
やがて、アフガニスタンへのソ連侵攻を契機に主人公と父親
はアメリカに亡命。主人公は亡命生活の苦難の中で大学を卒
業し、作家の道へと進む。そして彼の処女作が世に出た日、
母国の恩師からの電話が繋がる。その恩師は、彼に「絆は取
り戻せる」と告げた。
原題は、アフガニスタンの冬の風物詩「凧合戦」に関るもの
で、相手の凧糸を切って勝利したときに、その相手の凧を拾
ってくる召使の息子を指すようだ。その息子はいち早く凧の
落下点を見つけるのが得意だった。そしてその凧は額に入れ
て家に飾られた。
タリバン政権下でのアフガニスタンの様子を垣間見せたり、
亡命先のアメリカでも権勢を維持する元将軍の姿など、政治
的なメッセージは声高ではないが、うまく物語に取り込まれ
ていた。
そんな政治に翻弄される主人公の物語だが、物語の主題は、
主人公と召使の息子の関係に絞られ、友情と主従の関係が痛
々しく描かれる。脚本は『25時』などのデイヴィッド・ベ
ニオフ。政治から友情までの目配りは確かなものだ。
また、凧合戦のシーンでは、大空を自由に舞う凧の映像が素
晴らしく、もちろんVFXも多用されたシーンではあるが、
その描き方が美しかった。そして、映画後半の思いも掛けな
いアクションシーンには、さすが007に起用される監督だ
と思わせた。
『シスターズ』“Sisters”
1973年ブライアン・デパルマ監督作品『悪魔のシスター』の
リメイク。といっても、オリジナルから持ってきたのは基本
設定の部分だけで、そこから展開する物語は自由に発想され
ている。
本作の舞台は、小児病院と思われる医者のいる施設。巻頭の
シーンは、そこで何かのパーティが開かれており、潜り込ん
だ女性レポーターと院長との対立が露にされる。その病院で
は過去に医療ミスがあり、レポーターはそれを追っているよ
うだ。
そしてレポーターは居合わせた若い医師に救われるが、その
医師と共に不思議な事件に巻き込まれることになる。それに
は、院長の元妻が絡んでいるようだが、目撃したはずの殺人
事件は、何の証拠も残さず消去されてしまったりする。
それでも執拗に事件を追ったレポーターは、やがて驚愕の真
相を知ることになる。
オリジナルは見たはずだが、今回の作品の結末は何か変と言
うか物語の辻褄が合わない。これがオリジナルと同じだった
かどうか、今一つ釈然としないのだが、オリジナルもこうだ
ったとしたら、もう少しはその記憶が残っているはずのもの
だ。
オリジナルと同じ設定は、シャム双生児の分離手術でその一
方が死に、その思念が他方に乗り移って一種の2重人格とな
っているというもの。その乗り移った人格が凶暴で殺人も厭
わないというものだが…
本作ではさらにレポーターもそれに関るという結末が付いて
いる。しかしこれが、描かれた物語のままだと全く辻褄が合
わなくなる。この部分がオリジナルにあったかどうか思い出
せないのだ。
無理矢理辻褄を合わせようとすれば、分離手術で死んだ片割
れの思念が他人に憑衣する能力を持っていて…ということに
なりそうだが、映画の中にはその辺の説明が無かったように
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01月13日(日)
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