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On the Production
by 井口健二
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■ダンサーの純情、コルシカン・ファイル、ワル、カースド、ミュンヘン、モルタデロとフィレモン、マンダレイ
を解き、呪いを解こうと試みる。
主人公自身が呪いに掛かって、その呪いの効果を利用しなが
ら呪いを解こうとする展開は、ちょっと新機軸かな。一方、
銀器の使い方など設定は筋が通っているし、展開にも問題は
なさそうで、この辺はさすがベテランコンビの作品という感
じだ。
また、物語の背景になるのがロサンゼルスのテレビ業界とい
うことで、テレビの人気者の登場や、ハリウッド大通りの蝋
人形館ホラールームが舞台になるなど、楽屋落ちからクレイ
ヴン流のショッカーまで、いろいろとヴァラエティに富んだ
お楽しみも満載となっている。
特に、呪いが掛かると女性はセクシーに男性は敏捷になると
いう設定が設けられていて、最初は多少ダサい雰囲気の主人
公と弟が見る見る内に輝いてくる辺りは、あのリッチが…と
いう感じもあって見事に演出されている。
それにしてもリッチは、『モンスター』の好演でシャーリズ
・セロンの主演女優賞受賞をサポートしたかと思えば、ウデ
ィ・アレン作品に主演したり、それでいてこういうホラー作
品にもしっかり出てくれるのはうれしい限りだ。
『アダムス・ファミリー』『キャスパー』も懐かしいホラー
・プリンセスから、いよいよホラー・クイーンを襲名かな…
『ミュンヘン』“Munich”
1972年9月に発生したミュンヘンオリンピック選手村襲撃事
件に対して、イスラエル軍の特殊部隊モサドが行った復讐暗
殺事件の全貌を描いた作品。
と言っても、物語は史実に基づくとされてはいるが、モサド
の実体が現実に明らかにされたことはなく、実行犯の特定な
どもされてはいない。従って、映画に描かれている人物像や
人間関係などはすべてフィクションによるものだ。
ただし、現実にイスラエル政府が下したという<神の怒り作
戦>では、少なくとも13人が暗殺されたと言われている。と
言う実話に基づく作品を、ユダヤ人であることが公表されて
いるスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した。
この時点で僕は、この映画を見ることを大いにためらったも
のだ。がしかし、今の時点で脳天気に復讐劇が描けるはずも
なく、ではどんな作品になったのかというところが、この映
画の試写会に向かう際の最大の興味だった。
その作品は、上映時間2時間44分。最近は3時間を超える作
品も少なくないから、上映時間自体はこのような大作として
は普通だと思うが、見終えての疲労感をこれほどに感じた作
品は、他にないものだ。
しかもそれが、映画の不出来などで疲労するのではなく、描
かれた内容の重みによるものであるから、これはこの作品を
見ようとした者の宿命としか言いようの無いものだ。実際に
映画は、最初から最後まで肩にずっしりと錘を置かれたよう
な作品だった。
しかし今の時代に、我々はこの映画に描かれた現実から目を
逸らせてはいけないものだ。
映画の物語は、選手村襲撃によって開幕する。その様子は当
時のニュース映像をフェイクした映像なども交えて克明に再
現されて行く。そして悲劇の結末は、ニュース映像によって
紹介される。
この悲劇に対してイスラエル政府は、メイア首相の決断の下
に復讐作戦を開始する。このシーンでは、首相に扮した女優
が何の躊躇いも無く命令を下すことで、この復讐作戦がイス
ラエル政府の犯行であったことが明示される。
つまりこの映画では、かなり早い時点でこの復讐劇の主体が
イスラエル政府の命令であったことを明らかにして、罪がい
ずれにもあること、特に以下に描かれる犯罪はイスラエル政
府の責任であることを明白にしたものだ。
そしてこの視点が明白にされたことで、この映画が描くべき
こと、つまりテロ行為に対して報復で応えることの空しさ、
愚かさが明瞭に描かれて行くことになる。
従って主人公たちは、最初こそ大儀に基づく成功を喜ぶが、
やがて必要もない殺人にも手を染め自滅して行ってしまう。
そしてそんな愚かの行為の末路は、映画の結末で見事に描き
切られていたように思えた。
その他、選手村襲撃事件の再現では、いまだに謎とされてい
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01月30日(月)
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