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On the Production
by 井口健二
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■ナニワ金融道、七人の弔、メゾン・ド・ヒミコ、輝ける青春、世界、マイ・ファーザー
1966年から2003年までのイタリア・ローマに暮らす一家の姿
を追った上映時間6時間5分の大作ドラマ。
主人公は1948年生まれと49年生まれの兄弟。彼らの学生生活
から社会人となり、初老と言える年代に達するまでの37年間
が描かれる。
実際のところ、僕はもろに彼らと同じ年代な訳で、生活環境
にも通ずるところがあるし、また描かれる社会状況なども、
見覚え聞き覚えのあるものばかりで、それらを頷きながら見
ている内に、長丁場をだれることもなく見終えた。
そこには、大学紛争やヒッピーたちによる自然回帰の行動、
また映画の中では「赤い旅団」によって代表される共産系テ
ロ活動、さらに水害や噴火などの自然災害。その一方で結婚
や離婚など、この時代に起きた様々の出来事が描かれる。
それにしても、20世紀の前半は戦争に代表される国家レヴェ
ルでの激動の時代だったが、同じ世紀の後半が個人レヴェル
で如何に激動の時代であったのか、それが見事に描かれた作
品とも言える。
物語は、兄弟と彼らを挟んで姉、妹と両親の一家を中心に進
められるが、その妻や友人たち、また兄弟が関わる精神病患
者の女性や、さらに兄弟の子供たちの世代へと広がって、壮
大な時代絵巻が描き出されて行く。
僕自身は、多分この中では兄の存在に一番近いかも知れない
が、ここに登場する人物たちの誰であってもおかしくない。
恐らくは、どこかで一歩違えれば誰か別の存在になったかも
知れない、そんな気持ちにもなった。それくらいに全てが近
しい感じの作品だった。
21世紀になって4年が経ち、いよいよ20世紀後半を見直す機
会が増えてきそうだが、その一助とするには格好の作品と言
えそうだ。
また映画では、ローマ、トリノ、フィレンツェ、ミラノ、パ
レルモ、そしてストロンボリ島などの、イタリア中の風景が
次々に登場し、それらが全て現地ロケで写されているのも、
美しく素晴らしかった。
『世界』“世界”
『青の稲妻』などのジャ・ジャンクー監督による2004年ヴェ
ネチア国際映画祭出品作品。
監督の2002年の前作はどうも僕にはピンと来ない作品で、評
価もできなかったものだが、本作を見ると、なるほど各国の
映画祭がこぞって出品を求める監督という感じがした。
舞台は、北京郊外のテーマパーク「世界公園」。世界40カ国
の109カ所の著名な建築物が10分の1縮尺のレプリカで見学
できるこの公園には、園内を巡回するスカイウェイが設けら
れ、中央にはシンボルでもある3分の1縮尺のエッフェル塔
がそびえ立っている。
主人公は、この公園のホールで毎日上演されるアトラクショ
ンに出演する女性ダンサー。故郷を離れ、憧れの北京にやっ
てきたが、ショウダンサーの生活は楽ではない。そして、入
れ替わりの激しいダンサーの中では、今や姐さんと慕われる
存在になっている。
そんな彼女を中心に、「世界」という名の舞台で働いていな
がら、本物の世界には出て行くこともできない。夢を描きな
がらも、その夢を実現できない若者たちの、ほろ苦い現実が
描かれて行く。
もちろん、毛沢東の巨大な肖像画が飾られ、互いを同士と呼
びあう国と、自分の住む国との違いは大きい。しかしそこに
描かれる若者の夢や希望や悩みは、全てが万国共通ではない
にしても通じ合うところは沢山ある。そんな共感を覚える作
品だった。
2008年のオリンピック開催を目指して次々に変貌して行く北
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06月14日(火)
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