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On the Production
by 井口健二
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■ロング・エンゲージメント、エターナル・サンシャイン、レクイエム、ライトニング・イン・ア・ボトル、アイ・アム・デビッド、コーラス
時間に及ぶものだったということだが、本作はそれを1時間
50分に凝縮。さらにアーカイヴの映像やリハーサルシーンな
ども交えて構成されている。
映画の開幕は、楽屋にいろいろな顔触れが集まって来るとこ
ろから始まる。その様子は同窓会のようでもあり、ブルース
音楽に詳しくない自分でも、この顔触れが物凄いものである
ことが分かってくる仕組みだ。
そしてコンサートは、ブルースのルーツである黒人音楽をさ
らに遡って西アフリカの民俗音楽でスタート、ここからディ
ープサウスのデルタと呼ばれる黒人音楽を経て、ブルースへ
と歴史がたどられて行く。そこには、会場のスクリーンにも
写し出された奴隷売買の様子や、大樹から果物のようにぶら
下がる虐殺死体など、音楽に同期した画像も挿入される。
しかしブルースの時代に入ると、そこにはすでに故人となっ
たミュージシャンたち演奏風景や歌唱する姿が写し出され、
会場は一気に盛り上がって行く感じとなる。そして彼らの音
楽が、若いミュージシャンによって引き継がれて行く。
最近、音楽ドキュメンタリーがいろいろ公開されているが、
ただ1回のコンサートを記録して、ここまで奥深い作品に仕
上げた作品には、見事としか言う言葉がない。
もちろん、スコセッシの関わり方からして、最初から構成さ
れたコンサートであり映画であることは見えてくるが、それ
にしても、この作品がブルースに対する最高のサリュートで
あることは間違いない。
『アイ・アム・デビッド』“I Am David”
1963年の北欧児童書コンクールで最優秀賞に選ばれ、その後
18カ国で翻訳されたという原作を、ニューヨーク在住のプロ
デューサーとUSC出身の監督が映画化した作品。
1950年代のブルガリアの収容所を脱出し、自由があるという
デンマークを目指した12歳の少年の冒険を、ジム・カヴィー
ゼル、ジョアン・プロウライトらの共演で描く。
主人公のデイヴィッドは、1950年代のブルガリアの収容所に
いた。そこでは、文化人だった両親とも引き離され、一人で
過酷な労働や日々の生活に耐えていた。頼れるのは、ヨハン
という名の青年だけ。しかしある日、その生活に耐え切れな
くなった少年は…
そして収容所を脱出した少年は、いろいろな人たちの助けや
妨害に合いながらも、イタリアからスイス、そしてデンマー
クへ向かって旅を続ける。
原作は東西冷戦のさ中に発表されたもので、かなり政治的、
道徳的なものが押し付けがましい作品だそうだが、現代の映
画化ではそのような思想的なものは薄められて、いたいけな
少年の冒険の旅という描き方にされている。
先の登場人物が良いタイミングで再登場したり、御都合主義
の点は多々あるが、まあそういう作品ということで我慢する
しかない。それは別としても、結末があっけないのも気にな
るが、これも原作がそうであるなら仕方ないところだろう。
差し当たってはお子様向けの作品なのだろうし、その意味で
は適当な謎解きがうまく挿入されていたり、純真な心で見れ
ば結末はそれなりに感動できるものになっている。試写会で
は涙している女性も見られたものだ。
『コーラス』“Les Choristes”
アカデミー賞の外国語映画部門の候補にも挙がっているフラ
ンス映画。本国では昨年3月に公開されて、『アメリ』を抜
いて歴代第1位の興行成績を記録したようだ。
「池の底」と名付けられた寄宿学校。そこにはいろいろな事
情で他校には行けない生徒たちが集まっていた。当然、風紀
は最悪で、校長はそれに体罰を以て応えていたが…
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01月30日(日)
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