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On the Production
by 井口健二
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■嵐が丘、今は昔、栄養映画館の旅、ARCO/アルコ
田正明の長編デビュー作。監督は元々柄本とも交流があった
ようで、そんな監督が正に懐に入って撮影をしている。
出演はいずれも「東京乾電池」の西本竜樹、古橋航也、柴田
鷹雄、鹿野祥平、松沢真祐美、鈴木寛奈。そして各映画館の
館主や関係者。さらに柄本佑や佐藤B作など柄本明所縁の演
劇人たちが数多登場して様々な関りを語ってくれる。
柄本関連のドキュメンタリーでは2019年3月31日付題名紹介
『柄本家のゴドー』が演技論などを戦わせて見応えのある作
品だったが、それに比べると本作はかなり軽い感じの作品に
仕上がっている。
そこにはある意味映画館を巡る珍道中のような趣もあって、
気楽に楽しめる作品とも言える。そこに柄本明の人生観みた
いなものも鏤められるが、それとてもあまり深く語られるも
のではなく、エピソード的な描き方だ。
それはまあ、実際の朗読劇が背景にあるという今回のシチュ
エーションでは止む終えないところでもあるし、そんな軽め
の描き方が本作の成立としては正しいものだろう。ここに深
いものを期待しても仕方がない。
その一方で本作は、全国に現存する映画館のカタログのよう
な観方もできるもので、そこにはシネコンにはない風情も描
かれていた。勿論それには存続のための苦労なども語られる
が、全体として映画館の楽しさが顕著に描かれていた。
演劇に興味のある人だけでなく、映画という文化を残すため
にも全ての映画ファンに観て貰いたい作品だ。
公開は公演の24都市に含まれなかった東京で3月14日に池袋
の新文芸坐、3月20日にシネマヴェーラ渋谷、4月4日に早
稲田松竹にて朗読劇「今は昔、栄養映画館」をセットにした
特別企画イヴェントが行われ、新文芸坐と早稲田松竹ではそ
の翌日から映画のみの上映も行われる。
なおこの紹介文は、配給会社マジックアワーの招待で試写を
観て投稿するものです。
『ARCO/アルコ』“Arco”
ナタリー・ポートマンが製作に関与し、アメリカ公開版の声
優も務めているというフランス製のSFアニメーション。
プロローグは大空に広がる世界に暮らす幼い少年。姉と両親
の家族は時空を超えるスーツで旅に明け暮れているが、12歳
以下の少年にはその機会が与えられていない。しかし出来心
から姉のスーツを借用し、冒険を始めるが…。
物語の主な背景は2075年の近未来社会。そこに暮らす少女は
少し生きづらい気持ちも持っていたが、そんな少女の前に未
来から来た少年が現れる。しかしそれは災害を引き起こし、
未来に帰りたい少年との冒険が始まる。
脚本と監督は作家でアニメーターのウーゴ・ビアンヴニュ。
ただし監督が書いたのは物語の概要と詳細な絵コンテまでの
ようで、実際の脚本は2015年の映画『EDENエデン』などの主
演俳優で本作の製作も務めるフェリックス・ド・ジヴリが手
掛けている。
また米国版にはポートマンが出演と書いた声優には、日本版
でも多彩な演者が登場しているようだが、そこは情報解禁前
となっている。ただフランス語版の試写を観ていてある登場
人物の声には、日本版の配役が想像できたものだ。
それにしても何とも可愛らしいアニメーションが作られたも
のだ。「空から降ってきたのは、虹色の少年…」という惹句
にはジブリ作品も連想させるが、本作の製作意図もその方向
を目指しているようだ。
ただし物語は『E.T.』を踏襲しているもので、展開にもそ
の影響は観られる。主人公に関って空に掛かる虹の映像も、
確か『E.T.』にもそんなヴィジュアルがあったような…。
そんな感覚の作品だ。
物語の背景は2075年とさらに遠い未来(2932年)という設定だ
が、2075年がレトロ未来風に描かれているのもSFファンに
は魅力的な作品といえる。そして結末には哀愁もあって、そ
の辺が突き刺さってくる作品にもなっている。
特に傷ついたロボットの顛末は感動的で、見事という他にな
い作品だった。正に人の血の通ったSFアニメーションと言
える作品だ。素晴らしい作品をありがとう。
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02月22日(日)
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