ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459546hit]

■ぼくの名前はラワン、モディリアーニ!、センチメンタル・バリュー
リ、ライアン・マクパーランド。
さらに2012年2月紹介『裏切りのサーカス』などのスティー
ブン・グレアム、2005年『マリア・カラス』などのルイーザ
・ラニエリ。そしてアル・パチーノらが脇を固めている。
元々はアクターズ・スタジオで作られた舞台劇があり、その
主演にはパチーノが想定されていたそうだがそれは実現しな
かった。その後1997年にデップと共演した際にパチーノは自
らの監督でデップに主演を打診したが、これも頓挫。
そんな計画が2017年に今度はパチーノからデップに監督して
貰いたいと話が持ち掛けられた。それはデップの芸術家とし
ての才能を見込んでの打診だったとされる。そこからさらに
COVID-19禍などを経て映画は完成されたものだ。
そんなデップに渡された脚本がどんなものかは判らないが、
完成された作品は見事に映画を反映したものになっている。
そこには正に先週紹介した『チャップリン』など20世紀初頭
の映画へのオマージュが溢れているものだ。
正直に言って先週の作品との制作の時系列は判らないが、こ
のような作品を2週連続で見られたことにも喜びを感じてし
まった。改めてデップが映画スターであることを再認識でき
る作品だった。
公開は2026年1月16日より、東京地区はTOHOシネマズシャン
テ他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ロングライド、ノッカの招待で
試写を観て投稿するものです。

『センチメンタル・バリュー』“Sentimental Value”
2016年10月紹介『母の残像』などのヨアキム・トリアー監督
の新作で2025年第78回カンヌ国際映画祭で史上最長とされる
スタンディングオベーションを受け、忖度無しのグランプリ
を受賞した作品。
主人公は開演前は極度に緊張しながらも、舞台に登場すれば
圧倒的な演技力を見せる舞台女優。その女優の母親が亡くな
り、彼女は妹と共にお別れパーティを取り仕切る。しかし彼
女には家庭持ちの妹ほどの采配はできないようだ。
そのパーティに1人の男性が現れる。その男性は姉妹が幼い
頃に家を出て行った父親で、彼は各地で回顧上映が行われる
ほどの世界的な映画監督だったが、その父親を彼女は許して
いなかった。
そんな父親が彼女に出演のオファーを行う。その脚本は彼女
を想定して書いたもので、撮影は彼女らが育った家で行うと
いう。その家の所有権は父親のままで、彼女は撮影を止めら
れないが、出演は拒否、脚本も開くことなく突き返す。
そのためその映画は、ハリウッドから若手女優を招いて撮影
されることになるが…。回顧上映では姉妹が幼い頃に出演し
たとされる映像や、一方でハリウッド女優出演の現在の撮影
風景なども織り込みながら、家族の物語が描かれる。
出演は、監督の前作『わたしは最悪。』でも主演のレナーテ
・レインスベと、2018年2月11日付題名紹介『男と女、モン
トーク岬で』などのステラン・スカルスガルド。他に配信作
品に多く出演のインガ・イブスドッテル・リッレオース。そ
してエル・ファニングらが脇を固めている。
監督はラース・フォン・トリアー監督の遠戚にあたるという
ことで、登場する年配の監督が誰を想定しているのかは勘ぐ
ってしまうところもあるが、互いにライヴァル視もありそう
な親子の関係は普遍的なものでもある。
そんな共感もカンヌでのスタンディングオベーションやグラ
ンプリの所以でもあるのだろう。おそらく自分もその場にい
たら立っていただろうと思える作品だ。そんな巧みな物語が
展開される。
それはヨーロッパ人俳優の見事な演技力にも支えられている
ものだが、そこに放り込まれたエル・ファニングも素晴らし
く、特に作中での本読みのシーンでは動作を封じられた読む
だけの演技には驚かされた。
ファニングは2011年6月紹介『スーパー8』のことから注目
してきた女優だが、これは本格的な大物になっていきそうな
雰囲気だ。
公開は2026年2月20日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷
他にて全国ロードショウとなる。

[5]続きを読む

11月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る