ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459550hit]

■ぼくらの居場所、次元を超える
ララ、窪塚愛流、飯田団紅、マメ山田らが脇を固めている。
物語は2019年に発表された『狼煙が呼ぶ』に始まり、各年に
公開の「狼蘇山」という短編シリーズの集大成となるものの
ようで、登場人物の多くはシリーズにも関っているようだ。
でも初めて観ても理解に問題はなかった。
その物語はかなり哲学的な命題に根差しており、そのテーマ
は宇宙の果てのさらにその先はどうなのかというもの。この
テーマは劇中ではジュニアによって提示されるもので、表面
的には悪役の彼が映画を背負っているものだ。
そしてこのテーマは、実は1968年公開の『2001年宇宙の旅』
にも通底するもので、その観点で見ると本作には実に多くの
オマージュが描かれている。それは例えば宇宙服のデザイン
や彼が歩く通路の情景。
さらには1968年作でも有名なstar gate corridorへのオマー
ジュと思われるシーンでは、CGIを駆使してもしかすると
クラークとクーブリックは本当はこれが描きたかったのでは
ないかと思わせる映像まで登場する。
他にも法螺貝を落としてそれを拾うシーンなどは、1968年作
でのボーマンが食器を落とすシーンを髣髴させる。つまりこ
の作品は豊田監督による『2001年宇宙の旅』への回答の様に
も思えてきた。
その伝で言うと窪塚と松田はボーマンとプール、ジュニアは
HAL 9000なのかな。因に宇宙船の造形も突飛だが、1968年作
のディスカバリー号の造型にもいろいろ解釈はあったもの。
ただしここは1974年の『フレッシュ・ゴードン』かな?
『2001年宇宙の旅』へのオマージュと思う作品は2014年11月
紹介『インターステラー』などいろいろ指摘してきたが、本
作はその中でもクーブリックに寄せた作品として僕は評価し
たいと思う。実に楽しめる作品だった。
公開は10月17日より、東京地区は渋谷のユーロスペース他に
て全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社スターサンズの招待で試写を観
て投稿するものです。

09月07日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る