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On the Production
by 井口健二
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■ネムルバカ、花まんま、JOIKA 美と狂気のバレリーナ
試写状に「遠い昔にふたりで封印したはずの」という
文言があって、実はちょっと下世話な展開も予想してしまっ
た。しかし物語はある種のファンタシーというかSFと言え
るものでもあって、実に見事な展開となっていたものだ。
しかもそれが、ファンタシーという点では最近の流行りに近
いものではあるが、タイトルにもなっている小道具の扱いの
上手さで試写会場では自分も含めてかなりの涙が流されるよ
うな感動の作品になっていた。
それはこういう事象を事前に知っているか否かという点にも
繋がってくるが、正直に言って自分がSFファンで、この手
の出来事の存在を知っていたことにも感謝したものだ。まあ
最近はテレビ番組でも扱われる話だが。
因に原作の短編小説は主人公の子供時代だけを描いているそ
うで、映画のストーリーはその最期に付記された数行を基に
膨らませたものとのこと。脚本のクレジットには北敬太とあ
るが実在者ではなく、監督らが作り上げたもののようだ。
それにしても見事な映画作品が作られている。東映京都撮影
所の製作で、監督以下キャストも含めて関西ネイティヴの作
りも嵌っている作品だ。
公開は4月25日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す
るものです。
『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』“Joika/The American”
2012年にアメリカ人女性としては初めて世界最高峰とされる
ボリショイ・バレエ団に入団したジョイ・ウーマックの実話
に基づく作品。
ウーマックはワシントンD.C.にある名門バレエ・アカデミー
でロシア・バレエを学び、頭角を表して15歳でボリショイ・
アカデミーに入学を許される。そしてロシアに渡りバレエ団
への入団を目指すが、それは簡単な道程ではなかった。
そこには厳しい指導で生徒を震え上がらせる女性教官や見事
な資質を持ったライヴァルなど、様々な存在が彼女の行く手
を阻む。それでも一歩一歩進んで行く彼女の前に最大の試練
が訪れる。果たして彼女はそれを乗り切れるか?
出演は2021年スティーヴン・スピルバーグ版の『ウェストサ
イド・ストーリー』に出ていたというタリア・ライダーと、
2014年6月15日付「フランス映画祭2014」で紹介『バツイチ
は恋のはじまり』などのダイアン・クルーガー。
他にロシア連邦の構成国タタルスタン共和国タタル国立歌劇
場のプリンシパルで、2018年11月03日付「東京国際映画祭」
で紹介『ホワイト・クロウ』のルドルフ・ヌレエフ役を演じ
たオレグ・イヴェンコ。
脚本と監督は2015年にチェスの早指しチャンピオンを描いた
『ダーク・ホース』で多数の賞に輝いたニュージーランド出
身のジェームス・ネピア・ロバートスン。実在の人物を描く
ことに長けた監督がまたしても名作を生み出したものだ。
そして監督はウーマック本人にも協力を仰ぎ劇中演じられる
バレエシーンの振り付け、さらには主人公のバレエシーンの
吹き替えも演じさせている。またナタリア・オシポワらバレ
エ界のレジェンドも本人役で登場するという作品だ。
タイトルの「ジョイカ」は女性教官が主人公を呼ぶときの発
音だが、他の人物らは「ジョイ」と呼び掛けている。ここで
語尾の「カ」はロシア語では「・・ちゃん」というようなも
ので、そういう意味合いで使われているものだ。
因にこの「カ」の意味は1970年の「国際SFシンポジウム」
で来日したロシア人通訳に聞いたものだが、酒のウォッカが
「水ちゃん」だと聞かされた翻訳家の矢野徹氏が「ロシア人
の酒の強さが判る」と感心していたのを思い出した。
本作にもそんな酒のシーンは描かれていた。
公開は4月25日より、東京地区はTOHOシネマズシャンテ他に
て全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ショウゲートの招待で試写を観
て投稿するものです。
02月23日(日)
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