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On the Production
by 井口健二
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■プロジェクト・サイレンス、ミゼリコルディア、風たちの学校、初級演技レッスン、ジュ・テーム、ジュ・テーム
ところが加害者である主人公には人望があり、被害者が嫌わ
れ者であったことから事態がおかしくなり始める。そこに教
会の神父や警察も絡んで…。さらには性的マイノリティの問
題も関り始める。
出演は2018年6月3日付題名紹介『グッバイ・ゴダール!』
などのフェリックス・キシル。1980年アラン・レネ監督『ア
メリカの伯父さん』などのカトリーヌ・フロ。他にジャック
・ドゥヴレイ、デヴィッド・アヤラらが脇を固めている。
監督がどういう性癖の人かは判らないが、ゲイの絆みたいな
ものが巧みに描かれた作品とは言えそうだ。そして全体の物
語も極めて巧みに作られている。これはカイエ・デュ・シネ
マ誌ベスト10の第1位も納得だ。
そして意外性を次々に繰り出してくる脚本の上手さも堪能で
きて、何とも芳醇な作品と言えそうだ。こんな作品が3作連
続で観られるというのも楽しみになってくる。後2本の試写
が待ち遠しくなってきた。
なお試写状ではレイティングの記載はなかったが、劇中では
以前にはスクリーンに登場しえなかったものが登場する。し
かもそれがテーマを集約してしっかりと艶技しているのには
笑ってしまった。
1976年大島渚監督『愛のコリーダ』では主演の藤竜也が苦労
したと聞いたが、その労苦は当時のスクリーンには反映され
なかった。そんな歴史も感じさせてくれる作品でもあった。
そんなこと関係ない話だが。
公開は3月22日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社サニーフィルムの招待で試写を
観て投稿するものです。

『風たちの学校』
愛知県新城市・奥三河にある学校法人黄柳野学園・つげの高
等学校を舞台に、その全寮制全日制普通科の学園に学ぶ生徒
を追ったドキュメンタリー。
登場するのは男女1名ずつの生徒。その内の女子生徒は学内
の和太鼓のチームに参加して横笛の演奏に挑戦している。他
方の男子生徒はアメリカの大学を目指したいとしているだけ
で、傍目にもそれが真の目標なのか見えてこない。
そんな2人の姿が、先生方の指導や父兄との3者面談の様子
などを通して描かれて行く。さらに学園祭や町の行事に参加
して行く様子なども描かれる。それらは普通の学校と変わら
ないようでもあるし、明確な違いなどは判らない。
ただ2人は前の学校では不登校で、そこからこの学校に辿り
着いたということは紹介されるが、だからと言ってここで特
別な教育がなされているものでもないし、映画自体は普通の
学園と変わらない生活を描いているものだ。
実際に映画の中では彼らが不登校になった理由などは明らか
にされないし、3者面談のシーンなどで多少伺える部分はあ
るが、その辺を敢えて追求しない制作者の姿勢は貫かれてい
る感じはした。
監督・撮影・編集は田中健太。大阪芸術大学映像学科卒で在
学中に原一男監督の制作指導を受けたという監督は、自身が
つげの高等学校の卒業生で、従ってその後輩に寄り添う目が
この作品を生み出したとも言えそうだ。
本作のような社会的な事象を扱ったドキュメンタリーには、
正直に言ってある種の問題提起を期待てしまう。しかし本作
の場合はこの学園の存在自体が問題提起なのであって、そこ
に敢えて何かを付け加える必要はなかった。
そこで監督の目はただ彼らの姿を追い続けることに終始して
いるものだが、その優しさ温かさが果たして作品の存在価値
に寄与しているかどうか。ただ学園のPRに終わってしまっ
ている感じなのは物足りなかったかな。
それからプレス資料を見ると2人のその後が紹介されていた
ものだが、ここはやはり本作中でもその辺まではフォローし
て欲しかったかな。敢えてそれを描かなかったことにもモヤ
モヤを感じてしまったものだ。
公開は3月15日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給を行う合同会社はなしの招待で試写
を観て投稿するものです。

『初級演技レッスン』

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01月19日(日)
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