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On the Production
by 井口健二
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■ウィキッドふたりの魔女、あの歌を憶えている、Flow
フィクサーのはじまり』などのジョッシュ・チャールズ。
さらに『怪盗グルー』のシリーズで主要キャラクター、アグ
ネスの声優を務めるエルシー・フィッシャー。そして2018年
12月紹介『サスペリア』などのジェシカ・ハーパーらが固め
ている。
脚本と監督は2018年4月22日付題名紹介『母という名の女』
などでカンヌ映画祭の常連、2020年には『ニューオーダー』
という作品でヴェネチア国際映画祭金獅子賞も受賞している
メキシコの俊英ミシェル・フランコが手掛けている。
若年性認知症の話では、2005年7月紹介『私の頭の中の消し
ゴム』や、同年10月紹介『博士の愛した数式』など過去にも
秀作は多いが、本作ではさらに当人だけでなくその周囲にま
で話を膨らませたところは新機軸と言えるだろう。
しかもそれらがいずれも記憶に絡む話というところは脚本家
=監督の巧みさも感じさせるものだ。そしてそれらが意表を
ついて驚くような展開で描かれて行く。正しく映画の醍醐味
と言えるような作品だった。
因にタイトルの「あの歌」はプロコル・ハルムによる1967年
のヒット曲『青い影』だが、僕は今まで曲は知っていたが歌
詞までは知らなかった。それが本作では歌詞の字幕付きで流
れるが、まさかこんな歌とは…。それも驚きだった。
公開は2025年2月21日より、東京地区は新宿ピカデリー、Bu
nkamura ル・シネマ渋谷宮下他にて全国順次ロードショウと
なる。
なおこの紹介文は、配給会社セテラ・インターナショナルの
招待で試写を観て投稿するものです。

『Flow』“Straume”
2024年カンヌ国際映画祭・ある視点部門に出品され、同年の
アヌシー国際アニメーション映画祭では審査員賞と観客賞を
受賞したラトビア出身のアニメーター、ギンツ・ジルバロデ
ィス脚本、監督、音楽による作品。
恐らく近未来と思われる地球の物語。主人公はとある森の中
で1匹で暮らしていた猫。時には野犬の群れに追い掛けられ
ることもあるが、そこは機転を利かせて逃れたり、危険はあ
るがどうにか生き延びてきたようだ。
ところがその森に大洪水が襲い掛かり、上昇する水位で木々
も梢まで水没する事態となる。それでも猫は流れてきた船に
よじ登り、何とか難を逃れる。そしてその船には猫を慕う若
い犬やキツネザル、カピバラ、鷺なども乗り込んでくる。
やがてその船は水流に乗り、人間の痕跡が見える島や巨大な
建物の並ぶ廃墟へと漂って行くが…。
共同脚本にプロデューサーでもあるマティス・カジャ、脚色
にロン・ディアンという名前も並んでいる作品。体裁はファ
ンタシーだが、SF的にもいろいろと面白い考察ができる作
品だ。
骨子としては動物たちが協力して困難を克服して行く友情物
語といった感じだが、そこには当然人種差別のような意味合
いも含まれるだろう。特に犬だけの船との遭遇などには考え
てしまうところもある。
とは言え全体はファンタスティックな世界での冒険物語とい
う感じで、それはなかなか面白いものでもあった。ただ痕跡
だけで登場しない人類の行方には勘ぐってしまうところもあ
るもので、滅亡したのかそれとも…。
気象変動のことなどを考えると、もしかすると太陽の変調で
人類は地球を見捨てて動物だけが残されたのか? 主人公ら
の船がノアの箱舟にも見えて、それを暗示している可能性も
考えてしまった。だとすると悲しいお話かもしれない。
閑話休題、エンドクレジットを観ていたらStudio Dogsとい
う項目があって単語の名前が並んでいたが、Catsの項目は見
つからなかった。劇中の猫の動きはぎこちなくも感じたが、
監督は犬派かな? 猫は擬人化で仕方のない面もあるが。
いろいろ考察できて面白い作品だった。
公開は2025年3月14日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷
他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ファインフィルムズの招待で試
写を観て投稿するものです。

12月22日(日)
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