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On the Production
by 井口健二
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■サユリ、至福のレストラン 三ツ星トロワグロ、ジョン・ガリアーノ世界一愚かな天才デザイナー
でもまあそれらがすべて観察の範疇で繰り広げられるのは、
ワイズマン監督の真骨頂と言える作品だろう。「食」に関す
るいろいろな知見も得られるし、観ていてためになる作品と
言えるものだ。
それに日本人としては映画の始めの方で「活〆」という日本
語が出てきたり、中後半では「紫蘇」が連呼されるなど、観
ていてニヤリとするシーンも散見される作品だった。長丁場
をしっかりと準備して観たい作品だ。
それにしても客の好みからアレルギーまで事細かにチェック
してのメニューの組み立てやそれに関わる準備、接客など、
さすが三ツ星の名に恥じないサーヴィスの在り方もしっかり
と紹介され、これは教科書とも言える。
その一方で、調理法に困ったときには古典的な調理本や調理
の百科事典を参考にするなど、斬新さの中にも伝統を重んじ
る、そんな真摯な姿も描かれている。そんな調理への愛情も
感じさせるドキュメンタリーだ。
とは言え、作中ではヴィンテージワインの値付けに10000€と
いう発言が出てきたり、ちょっと庶民とはかけ離れた世界の
話かな。でもそれが世界なのだし、それを描くのがドキュメ
ンタリー、それを楽しむのも映画鑑賞だ。
公開は8月23日より、東京地区はBunkamura ルシネマ澁谷宮
下、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社セテラ・インターナショナルの
招待で試写を観て投稿するものです。

『ジョン・ガリアーノ世界一愚かな天才デザイナー』
            “High & Low - John Galliano”
美術学校での卒業制作の発表から、瞬く内にディオールにま
で上り詰めた天才デザイナーが舌禍によって凋落。その顛末
に2009年4月紹介『消されたヘッドライン』などのケヴィン
・マクドナルド監督が迫ったドキュメンタリー。
映画はデザイナーが問題発言を放った酒場での映像で始まる
が、そこから溯ってデザイナーの来歴が紹介される。それは
正に華々しいファッション界の寵児と言う感じの映像が展開
されるものだ。
しかしそれが暗転、舌禍は元々は別の男性への全く異なる内
容の発言だったが、その後に冒頭の映像が拡散されて、一気
にデザイナーを追い込んだ。そしてディオールからの解雇な
どの凋落となる。
そんな顛末が丁寧に描かれ、さらにそこからデザイナー本人
へのインタヴューが登場して釈明や謝罪の言葉などが綴られ
て行く。そして3年後の電撃復帰など、正に波乱万丈の展開
となるものだ。
それは観ていてファッションなどに一切関心のない僕にとっ
ても興味が湧いたし、面白い作品に構成されていたものだ。
この辺は数々のヒットドキュメンタリーを手掛けてきた監督
の手腕と言える作品だった。
出演はジョン・ガリアーノ本人に加えて、ケイト・モス、ナ
オミ・キャンベル、ペネロペ・クルスらのモデル、女優。さ
らにディオール社の最高経営責任者のシドニー・トレダノ、
VOGUE 誌編集長のアナ・ウィンターらも登場する。
一方、デザイナーを最初に告発した東洋人の男性も登場する
が、彼はデザイナーが会見で語った謝罪を受け入れて告発を
取り下げようとしていたというのだが…。そこに冒頭の映像
が登場して事態が混乱して行く。
その冒頭の映像でのデザイナーの発言は、それは社会人とし
て愚かしいものであり、全く許されるものではないのだが、
果たして酒飲みが酒の席で放った戯言がそんなにも個人を貶
めてしまうものなのか? その恐ろしさに震撼した。
実際、日本でも2021年の東京五輪開会式に関連してよく似た
ことが起きた訳だが、それに関ったのと同じ団体がこの件に
も関っていたようで、特に最初に告発した東洋人男性の発言
の変化が、事態の恐ろしさを物語っていたものだ。
公開は9月20日より、東京地区は新宿ピカデリー、ヒューマ
ントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

06月23日(日)
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