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On the Production
by 井口健二
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■PS-1黄金の河、ブレインウォッシュ:セックス・カメラ・パワー
るロボットマリアのダンスシーンや、2017年版の『ブレード
ランナー2049』など、SF映画も散見される。他にも韓
国映画なども選ばれていたものだ。
それらは「男性のまなざし」の類例として取り上げられてい
るものだが、その一方でソフィア・コッポラ監督の『ロスト
・イン・トランスレーション』など、女性監督の作品でも同
様の「男性のまなざし」があることも紹介される。
ということで古今東西の映画が女性を性的対象物として搾取
してきたことが論じられて行くものだが…。実際その主張は
正しいものだし、それによって女性差別などの多くの事象が
生じてきたという意見も傾聴すべきものだ。
とは言うものの論証自体がかなり弱いことは否めない。特に
せっかくソフィア・コッポラの作品を取り上げながら本人に
その意味を語らせなかったのはなぜなのか? それを撮った
理由を本人の口から聞きたかった。
その一方で突然ロザンナ・アークェットが登場してハーヴェ
イ・ワインスタインへ告発を始めたのには唖然としてしまっ
た。これでは結局 me too 運動への尻馬に乗ったようにしか
見えてこず、底が浅くも見えてしまったものだ。
さらに「男性のまなざし」が女性の姿態ばかりを観ていたか
と言えば、SF映画では『ブレードランナー』のオリジナル
が公開された1982年の2年後には『ターミネーター』が公開
され、そこにはシュワルツェネッガーの裸体が登場する。
それ以前にも『ターザン』映画では半裸の男性が描き続けら
れていた。特にターザンはエドガー・ライス・バロウズの原
作では英国紳士としても登場するのに、映画がそれを描くの
には1983年の『グレイストーク』まで掛かった。
また『メトロポリス』の脚本は女性のテア・フォン・ハルボ
ウによるものだし、さらに1936年のベルリンオリンピックを
写した2部作の記録映画でレニ・リーフェンシュタール監督
は男性の姿態を美しく捉えてもいる。
そんな事象が多数ありながら恣意的に一部の作品を取り上げ
ていることは明らかで、論証というにはあまりに中途半端。
主張していること自体は正しいだけに却って物足りない感じ
にもなってしまった。
公開は5月10日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コピアポア・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。

04月07日(日)
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