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On the Production
by 井口健二
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■胸騒ぎ、人間の境界
しているポーランド側は彼らをロシアが送り込んだ人間ミサ
イルと称してベラルーシに押し戻す策に出る。
こうして国境の森林地帯で行き場を失った人々の姿を、当事
者である難民たちと、難民の支援活動を行っている活動家や
地元の人々、それに国境警備隊の若い隊員らの行動を通して
描いて行く。
出演は、シリア生まれの俳優で2011年のシリア革命で逮捕・
投獄・拷問を経験して西側に亡命したというジャラル・アル
タウィル。ポーランド生まれで2017年5月紹介『君はひとり
じゃない』などのマヤ・オスタシェフスカ。
さらにイラン生まれで2018年11月11日付題名紹介『バハール
の涙』などのベヒ・ジャナティ・アタイ、シリア生まれで現
在はダマスカス国立劇場の舞台俳優としても活動しているモ
ハマド・アル・ラシ。
他にダンサー・振付師としても活動するフランス系レバノン
人のダリア・ナウス、2016年アンジェイ・ワイダ監督の遺作
『残像』に出ていたというトマシュ・ヴウォソクらが出演し
ている。
映画の中にも中東やアフリカから西欧を目指した難民の内で
3万人が目的地までたどり着かずに亡くなったという台詞が
出てくるが、国境線に設置された難民キャンプなどの惨状は
既にドキュメンタリーなどで知られていたものだ。
しかし本作はメディアも入れない立ち入り禁止区域での話。
その区域は真実を知られたくない執政者が定めたものなのだ
が、監督らはその規制を掻い潜って証言を集め、闇の中の真
実を暴き出した。
いやはや、正しく人間性を疑う悪夢のような所業が展開され
る。その中には必死に善を行おうとする人たちもいるが、こ
れが今の現実だということも我々は知らなくてはいけない。
正しく人間の境界の彼我の問題だ。
公開は5月3日より、東京地区はTOHOシネマズシャンテ他に
て全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試
写を観て投稿するものです。

03月17日(日)
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