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On the Production
by 井口健二
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■プリシラ、ナチ刑法175条
は今の時代には想像もつかない、正に悲劇と言える過酷な証
言の数々だ。
とは言うものの、このナチスによって厳格化された法律は、
第2次大戦後の東西分裂で自由主義国家になった西ドイツで
も1994年まで存続し戦後にも多く逮捕者がいる。むしろ東ド
イツの方が先んじて1989年に廃止されているものだ。
そしてこの作品は1996年に制作開始されたということだが、
遅きに失したというか、ナチス政権下で同法によって逮捕さ
れ収容所に送られた 1.5万人ともされる人々で、制作時に生
存が確認されたのは12人しかいなかったというものだ。
この手の証言系のドキュメンタリー制作は多くが時間との競
争になるが、本作の場合はさらに法律を含めた社会情勢がそ
の妨げになっている。因に現時点では証言者の多分全員が亡
くなっており、最早得ることのできない貴重なものだ。
そんな貴重な証言が詰まった作品だが、同時にそれは現代社
会への警鐘になっているとも感じる。いつまた同じ社会情勢
になるかもしれない。そんな恐ろしさも感じさせる作品だっ
た。
正しくマイノリティである彼らの生き様や発言を記録して後
世に残す。それも映画の重要な役割なのだ。
なお映画に登場するインタヴュアーは、2018年に「ホロコー
スト・ジェノサイド・人類犯罪委員会」の委員長を務めたク
ラウス・ミューラー。ナレーションはゲイをカミングアウト
している英国俳優ルパート・エヴェレットが務めている。
公開は3月23日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。

02月18日(日)
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