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On the Production
by 井口健二
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■PERFECT DAYS、笑いのカイブツ、私がやりました、マリの話、東京遭難、彼方の閃光
めている。
原作者の名前には聞き覚えがあって何となく気になっていた
が、こんな人物なのだと改めて理解できた次第。映画の主人
公はある種の適応障害なのだろうけど、自分自身も含めて現
代には多くいそうな人物だ。
そんな主人公がそれでも必死に生きようとし、挫折を繰り返
しながらも自分の生きる道を見付け出して行く。それは現代
社会に生きる若者たちへのある種のエールのような作品にも
見えた。
とは言うものの周囲にいたらウザいの一言のような人物で、
彼と付き合うのは大変だろうなあとは思わせる。でもそれは
しっかりとやっておかないと後で映画にされちゃうかもしれ
ないよ! そんなことも考えてしまう作品だった。
因に、映画に登場する漫才コンビ・ベーコンズやその他の芸
人のネタは全てツチヤタカユキが本作のために書き下ろした
ものだそうで、それを観るだけでも彼の才能が判るというも
の。正にタイトル通りの物語と言えそうだ。
公開は2024年1月5日より、東京地区はテアトル新宿他にて
全国ロードショウとなる。
『私がやりました』“Mon crime”
2002年9月紹介『8人の女たち』などのフランソワ・オゾン
監督が、同作と2010年『しあわせの雨傘』に続き女性の生き
方を魅惑的に描いた3部作の最終章と称する作品。
時は1935年、所はパリ、その郊外に建つ邸宅から女性が急ぎ
足で出てくる。その女性は駆け出しの女優で、やはり駆け出
しの女性弁護士とパリのアパルトマンで共同生活をしていた
が、家賃の払えないほどの金欠状態だった。
そんな時、彼女が出てきた邸宅で映画プロデューサーが殺さ
れたとの報が入り、警察は彼女に「パリを離れないように」
という命令を告げる。この状況に証人になれば日当が貰える
とのルームメイトの言葉に乗った彼女だったが…。
判事の許に向かった彼女は自分が容疑者にされていることを
知り、殺人犯として裁判が始まった彼女に思わぬ展開が幸運
をもたらすことになる。ところがそこに「私が真犯人」と名
告る無声映画時代の大女優が現れる。
出演は2019年11月6日付「東京国際映画祭」で紹介『動物だ
けが知っている』(公開題名:悪なき殺人)にて最優秀女優賞
授賞のナディア・テレスキウィッツ。2011年3月紹介『黄色
い星の子供たち』などのレベッカ・マンデール。
そして2023年8月紹介『私はモーリーン・カーニー』などの
大ベテラン=イザベル・ユペール。さらにファブリス・ルキ
ーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエらが脇を固め
ている。
オゾン監督は2010年9月紹介『Ricky』のような作品も
発表しているが、本作は『8人の女たち』にも通じる舞台劇
のような作品で、それも日本で言えば浅草軽演劇のような人
間味と皮肉が入り混じったような展開になっている。
それは特段現代に通じるようなものでもないが、女性の生き
方という点では、正に女性目線で描かれた作品とは言えそう
だ。そしてそれに男たちがいい様に引き回されて行く様子も
小気味よく描かれている。
まあそれを男性の自分が観ても面白く観られるのだから、こ
れこそがフェミニズムの極致なのだろう。そんなオゾン映画
の魅力が最大限に引き出されている作品とも言えそうだ。若
手女優2人も魅力的だし、ユペールの怪演も見どころだ。
なお本作はコメディだが、あえて笑いを取りに行っているよ
うなシーンはオゾン監督の意向で編集段階でカットされてい
るそうだ。でも何となく爆笑ヴァージョンも観てみたい気持
ちにもなってきた。
公開は11月3日より、東京地区はTOHOシネマズシャンテ他に
て全国順次ロードショウとなる。
『マリの話』
2015年に公開された上映時間5時間17分の超大作『ハッピー
アワー』(濱口竜介監督)で助監督を務めたという高野徹監督
による長編デビュー作。
物語は4つの章に分けられ、「夢の中の人」と題された第1
章では脚本執筆中の映画監督が夢の中に出てくる女性に偶然
出会い、女性に映画への出演を要望して関係を深めて行く様
子が描かれる。
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10月01日(日)
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