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On the Production
by 井口健二
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■花腐し、春画先生、QUALIAクオリア、コーポ・ア・コーポ、SISU/シス 不死身の男
香那、そして『花腐し』などの柄本佑。さらに白川和子、安
達祐実らが脇を固めている。
公開はR15+指定となっているが、これは春画が無修正で画面
に登場するため。実は春画が一般映画でこのように描かれる
のは初めてのことだそうだ。そんなことに挑戦している映画
ということもできる。
でもまあ内容的には実にあっけらかんとしたコメディで面白
く、また時に真剣にこのテーマが描かれている。それは江戸
時代には開放的だった春画を含む文化が、明治以降の西洋化
で弾圧されたという文明批評にもなっている。
それに併せて現実の性愛行動も巧みに描写されており、それ
らを出演者たちが体を張って演じているのも見どころと言え
そうだ。特に柄本佑は2作続けてその肉体美?を見ることに
なってしまった。
いずれにしても春画という文化を真正面から捉えたという点
で好感を持てる作品だし、そこに託された主人公らの悲しみ
なども見事にドラマに結実させた作品と言える。特に写真か
ら登場の安達祐実は出色だ。
公開は10月13日より、全国ロードショウとなる。

『QUALIAクオリア』
劇作家越智良知による「劇団うつろろ」が2021年に上演した
舞台劇を、2022年11月紹介『餓鬼が笑う』などに出演の俳優
牛丸亮が初監督で映画化した作品。
主人公は養鶏場に嫁いだ女性。家族は夫と、障碍者だが猟師
でもある義姉。それに従業員の若者がいて主人公は鶏の世話
など懸命に行っている。しかし夫婦に子供はなく、義姉には
こき使われている。それでも和やかに暮しは続いていた。
そんな一家の許に突然若い女性が現れ、アルバイトの募集に
応募したいと言い出す。その言葉に主人公は了承して女性は
一緒に暮らし始める。そして義姉に取り入るかのように世話
を始め、さらに猟にも同行するようになる。
こうして主人公の仕事は少し楽になるのだが、数日後、女性
は突然、主人公の夫の子供を宿していると主張し始める。し
かし主人公はそれにも動じず、和やかな日々を継続するのだ
が…。一家の暮らしが徐々に破綻し始める。
出演は2013年4月紹介『フィギュアなあなた』などの佐々木
心音、2023年8月紹介『市子』などの石川瑠華、2022年6月
紹介『激怒』などの木口健太、本作のエグゼクティヴプロデ
ューサーも務める久田松真耶、劇団「愚者愚者」の藤主税。
さらに芦原健介、木村知貴、川瀬陽太らが脇を固めている。
監督はオリジナルの舞台に感激して映画化を申し出たそうだ
が、物語は実に面白い。成程これなら普通にも起こり得る話
だし、多少突飛なところはあっても全体の流れの中で納得で
きてしまう。中々の秀作に思えた。
そしてそんな物語を出演者たちが実に普通に演じている。特
に佐々木はいつも微笑みを絶やさないという役柄を自分のも
ののように演じており、エンディングの展開からは続編も期
待したくなるものになっていた。
久しぶりに日本映画を観た、という感じにもさせてくれる作
品だった。日本映画の現状を知るには好適な1本と言うこと
もできそうだ。
公開は11月18日より、東京地区は新宿のK's cinema他にて全
国順次ロードショウとなる。
因にタイトルは英語で「感覚質」と訳され、『広辞苑』によ
ると「感覚的体験に伴う独特で鮮明な質感」であり、「脳科
学で注目される」概念だそうだ。これに対し哲学者からは、
「クオリアという概念に意味があるかどうかですら、意見が
分かれている」とされている。(出典:ウィキペディア)

『コーポ・ア・コーポ』
日雇労務者の岩波れんじが2019年に初連載で発表したコミッ
クスを、2019年『燃えよ!失敗少女』などの仁同正明監督が
映画化した2000年代の大阪が背景の群像劇。
舞台は昭和レトロの雰囲気漂う木造の安アパート。そこには
それぞれ少し訳ありの住人たちが、家賃の取り立てが来ると
互いに声を掛けて部屋から姿をくらます程度のゆる〜い連帯
で暮らしていた。
しかしその日は声を掛けても応答のない部屋のドアを開ける
と、その部屋の住人が首を吊って自死していた。そんな住人

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09月10日(日)
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