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On the Production
by 井口健二
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■蔦哲一朗短編集、ドミノ、ラ・ボエーム、リバイバル69〜伝説のロックフェス〜、火の鳥エデンの花
実はいろいろあって原題を確認しないまま観に行ってしまっ
たのだが、それが正解だったようだ。SFファンにはお馴染
みの単語だが、見事ネタバレしてしまっている。従ってでき
れば原題を見ずに観て貰いたい作品だ。その点で邦題は実に
ありがたいものになっている。
実際にこのテーマの作品は過去にもいろいろあるが、本作で
はさらにそこにヴィジュアル・インパクトも追加して、それ
は鮮烈な作品になっている。このヴィジュアルも過去にない
訳ではないが、その扱いが見事に嵌っていた。
そんなこんなで、SF映画ファンにはお楽しみが目一杯に詰
まった作品とも言える。しかもエンドロールにも仕掛けがあ
って、これは見逃せない作品だ。監督と主演の2人は本当に
SFが好きなんだなあとも思った。
公開は10月27日より、全国ロードショウとなる。
『ラ・ボエーム』“La Boheme”
ジャコモ・プッチーニの作曲により1896年にイタリアトレノ
で初演された歌劇を、2022年のニューヨークを背景に再構築
した作品。
開幕は都会の片隅で詩人と画家、哲学者、音楽家が共同で暮
らしているアパートの一室。大晦日の夜に暖炉にくべる薪も
なく、寒さに耐えかねた詩人は遂に売れない自作の原稿を燃
やし始める。
ところがそこにパトロンが付いたという音楽家がワインと食
料を持って登場。祝宴となり掛かるが、音楽家の提案で食料
は残して酒場に向かことになり、作品を書き上げるという詩
人を除いた3人は出掛けて行く。
そして詩人だけが残った部屋に1人の女性が訪れ、停電が起
き…とまあ、物語はオリジナル通りに進行して行くものだ。
それが現在のトップクラスとされるオペラ歌手たちによって
演じられる。
出演は、中国人テノール歌手シャン・ズウェン、中国人ソプ
ラノ歌手ビジョー・チャン、メキシコ系アメリカ人バリトン
歌手ルイス・アレハンドロ・オロスコ、プエルトリコ人ソプ
ラノ歌手ラリサ・マルティネス。
さらに日本人バス歌手井上秀則、アフリカ系アメリカ人バリ
トン歌手マーケル・リード、アメリカ人カウンターテノール
歌手アンソニー・ロス・コスタンツォ。
監督は、ヴィジュアル・アーチストでオペラ監督のレイン・
トレマーが長編デビュー作として担当した。
オリジナルのオペラは題名の通りボヘミアンの話だが、本作
ではそれが配役でも判る通りの東洋人を中心としたマイノリ
ティに置き換えられている。そして原作で死をもたらす病が
COVID-19と思わせるのも現代化のポイントだろう。
その辺が本作の特徴かな…。とは言うものの、歌われる歌曲
がプッチーニのそのままでは大筋の物語には変化の付けよう
がないもので、オリジナルをただ背景だけ変えたものという
印象は拭えない。
敢えてミュージカル版とするには、『レント』という名作も
あるのだし、その辺はちょっと中途半端な感じもした。ここ
は無理をせずに、単に現代版ということで行った方が良いの
ではないかな。オペラの部分は間違いなく本物なのだし。
公開は10月6日より、東京地区はTOHOシネマズシャンテ他で
全国ロードショウとなる。
『リバイバル69〜伝説のロックフェス〜』
“Revival69: The Concert That Rocked the World”
1969年9月13日にカナダで行われたone-day, twelve-hourの
音楽フェス‘The Toronto Rock and Roll Revival’ 開催の
顛末を描いたドキュメンタリー。
フェスが行われた60年代後半は、ヒッピーやフラワーチルド
レンの台頭で旧来のロックンロールは廃れ始めていたのだそ
うだ。そんな風潮の中で、カナダの若いプロモーターがロッ
クの復権を賭けたフェスティヴァルを企画する。
そこには彼らの意気に感じたチャック・ベリーやリトル・リ
チャード、ジェリー・リー・ルイスにジーン・ヴィンセント
らが参集。ところがチケットは一向に売れない。そこで彼ら
は当時大人気のドアーズにも声を掛け、参加が決まる。
しかし開催1週間前になってもチケットの売れ行きは向上せ
ず、遂に彼らは秘策中の秘策としてジョン・レノン&オノ・
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09月03日(日)
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