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On the Production
by 井口健二
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■フリークスアウト、THE KILLER/暗殺者、NO LIMIT, YOUR LIFE
グループ「公園少女」のイ・ソヨンと、4部作ドラマ「ファ
ンレターを送ってください」で人気のパク・ヨンウン。他に
香港やハリウッド映画にも出演のアクション俳優ブルース・
カーン。テレビドラマに多数出演のイ・スンジュンらが脇を
固めている。
原作はウェブ小説だそうで、その物語からチャンの前作でも
組んだというチェ・ジェフンが監督している。
格闘技自慢の俳優が自ら企画したアクション映画と言うのは
他の国でも散見されるところだが、得てして格闘技の見せ場
ばかりで映画としては不満足なことも多い。その点で本作は
原作を巧みに昇華させたというところかな。
物語もそれなりのどんでん返しがあったり、巧みに作られて
いるし、特に主人公と妻との関係性が短いシーンで巧みに表
現されているのも良い感じだった。上で紹介の作品で女性フ
リークスのドラマも一瞬のシーンで表現していたが、本作も
その短いドラマが響いてくるものだ。
そして本来のアクションシーンでは、斧から拳銃まで多彩な
武器が巧みに扱われて、しかも元暗殺者という設定らしく、
敵を必ず仕留めて行くという展開も観ていて納得できるもの
になっていた。その行為に全く後ろめたさがないというのも
見事な作劇だ。
それに韓国映画には珍しく(?)、政治家が全く絡んでこない
というのも観ていてすっきりする感じだったかな。取り敢え
ず上質のエンターテインメントと呼べそうな作品だ。上映時
間が95分というのも良い。
公開は5月26日より、東京地区はシネマート新宿他にて全国
ロードショウとなる。

『NO LIMIT, YOUR LIFE』
27歳でALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した男性と、その
病を知りながら結婚した女性を追ったドキュメンタリー。
内容紹介からは2018年12月2日付題名紹介『こんな夜更けに
バナナかよ』を思い出したが、その作品で描かれたのは筋ジ
ストロフィーによる全身麻痺。それに対してALSでは、発
症後には手足の麻痺だけでなく、喉の機能の低下による誤嚥
を防ぐための胃婁処置によって声も奪われ、眼球の動きによ
るコミュニケーションも困難になって行くという。正しく難
病中の難病と言われる病だ。
しかし本作に登場する武藤将胤・木綿子の夫妻は、その状況
を打開すべく雄々しく立ち上がって行く。そんな夫妻がまず
着目したのは、ALSで最後まで動かせるとされる「目」。
そのため夫妻は眼鏡メーカーと協力して目の動きを検知する
眼鏡を開発。それを用いて将胤はDJになる夢を叶え、著名
アーチストとの共演も果たす。
元々将胤は、発症前は大手広告代理店の広告マンだったとい
うことで、そんな前職での人脈がこういう事業を叶えさせて
いるのかもしれない。それ自体が普通の人とは違うと言われ
てしまうかもしれないが、こうやって実現した技術が他の患
者にも還元されることを考えれば、大いなる実験材料として
の活動も称賛されるべきものだろう。
その点で言えば、途中で登場する高額の車椅子のシェアする
話も、彼の行動力を見事に表していると言える。特にそこで
語られるALS患者は病の進行によって車椅子に乗れる期間
が短いという言葉には、この病気の本当の恐ろしさも衝撃的
に描かれていた。
さらに「目」が動かせなくなった時に備えて、脳波を直接計
測してコミュニケーションを採れるようにする試みや、分身
ロボット「OriHime」 の開発状況など、ここまでくるとある
種のSFを観ているような気分にもなってくる、そんな未来
が見事に展望される作品にもなっていた。
監督は、テレビ朝日「報道ステーション」のディレクターと
して2015年にはALS患者に密着したドキュメンタリー番組
で日本民間放送連盟賞を受賞した毛利哲也。ナレーションを
夫妻との交流も深いという石原さとみが担当している。
公開は6月23日より、東京地区はT・ジョイPRINCE品川、大
阪地区はT・ジョイ梅田にて先行上映の後、7月7日からは
丸の内TOEI他にて全国順次ロードショウとなる。
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05月07日(日)
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