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On the Production
by 井口健二
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■WORTH命の値段、うつろいの時をまとう、Single8
共に、服飾の原点にも迫るような、深い思想なども語られる
ものだ。
僕自身は正直に言ってファッションには全く興味がないもの
で、以前にもファッションに関るドキュメンタリーを観ては
いるが、それを評価する自信は持てなかった。しかし本作に
関しては、ファッションだけでない何かを感じた。
それは上記のコレクションに付された言葉にも表される日本
文化の本質に係るような気がして、観ていていろいろと考え
てしまうところもあったものだ。そしてそれが2人のデザイ
ナーの思想にも繋がっている。
正に理想的なドキュメンタリーのようにも感じられた。
監督は2018年12月23日題名紹介『がんになる前に知っておく
こと』などの三宅流。前作はインタヴューで綴るという構成
に少し物足りなさを感じたが、本作では各自がしっかりと語
ってくれるので納得できた。
そのインタヴューではデザイナー2人の他に、輪島塗塗師の
赤木明登、能楽師の津村禮次郎、俳人の大高翔がそれぞれ本
作のテーマに沿った発言をしている。それらもなかなか聞き
応えのあるものだった。
近年のグローバル化という言葉によって日本人が見失ってし
まったもの。そこには先人の作り上げてきたものや、日本の
自然風土に則してきたものがあった。そんなことも考えさせ
られる作品だった。
公開は2023年3月25日より、東京は渋谷のシアター・イメー
ジフォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
『Single8』
2013年11月紹介『赤々煉恋』などの小中和哉監督が、自らの
原点でもある高校時代の8o映画制作を再現した青春ドラマ
作品。
1978年夏、世界中を熱狂させた『スター・ウォーズ』が1年
遅れで日本でも公開され、映画制作に興味を持つ高校生の主
人公は早速雑誌の記事を頼りに8oカメラで宇宙船の撮影に
挑戦する。
そんな主人公はホームルームで文化祭でのクラスの企画とし
て映画制作を提案するのだが、対抗馬のお化け屋敷に反対す
る女子の支援で企画が通ってしまう。しかもヒロイン役には
クラスのマドンナが出てくれることになり…。
大学の映画研究会に所属する写真屋の店員のアドヴァイスな
ども受けながら、高校生最後の夏休みの映画製作がスタート
する。そこには様々なトラブルも待ち受けていたが、いろい
ろなテクニックも駆使して映画制作が進められる。
出演は、2020年3月29日題名紹介『許された子どもたち』な
どの上村侑と、2021年『ベイビーわるきゅーれ』などの熕ホ
あかり。他にホリプロ所属の男性ダンス&ボーカルユニット
WATWING の福澤希空と桑山隆太。
さらに小中監督ゆかりの川久保拓司、北岡龍貴、佐藤友祐、
1986年『星空のむこうの国』などの有森也実らが脇を固めて
いる。因に有森の出演シーンの撮影は、『星空』の時と同じ
監督の実家だそうだ。
上映後の挨拶でも監督は、2011年6月紹介『スーパー8』に
触発されたと語っていたが、本作ではSingle8 の特徴である
巻き戻しによるカメラ内合成なども再現されて、正に1978年
の日本の映画少年が描かれている。それはまだ家庭用ヴィデ
オカメラも普及する前の話だ。
そして劇中で撮影されている作品も、実は監督が高校時代に
撮った作品に沿ったものだそうで、元々は宇宙船のシーンだ
けを再現したいと思っていた少年が、ストーリー作りなどの
映画制作に目覚めて行く展開も実話に則しているようだ。
そんな訳で正に監督の自己オマージュという感じなのだが、
どうせならさらにそこから本編部分をファンタシーにもして
欲しかったかな。2011年作をまるで真似するのも気にしたの
かもしれないが、小中流のファンタシーも観たかった。
公開は2023年3月18日より、東京は渋谷のユーロスペース他
にて全国順次ロードショウとなる。
12月25日(日)
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