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On the Production
by 井口健二
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■AI崩壊(再考)、プロジェクト・G、ムルゲ(影裏、恐竜が教えてくれたこと、フェアウェル、星屑の町、ステップ、黒い司法、プラド美術館)
凶悪犯罪を犯しながら未だ正体の掴めていない国際偽造団の
首謀者を捕らえるためで、彼はその愛弟子だったのだ。
そしてその移送された香港警察本部には彼の存在を警察に通
報したセレブの女性も現れ、彼女も見守る中で彼と首謀者と
の関係を辿る取り調べが始まるが…。それは黄金の三角地帯
の闇組織も絡む凶悪な犯罪の歴史だった。
映画は彼と首謀者との関係を辿りながら、タイ国軍の協力に
よる山間の村全体が吹っ飛ぶような強烈な戦闘・爆破シーン
や銃撃戦などを織り込み、その一方で観客全員を欺くような
見事な物語が展開されて行く。
しかもその結末では、実は同日に試写を観て次に紹介する作
品にも似た展開となるのだが、それがまた物語の曖昧さを倍
加させて、物語全体の把握をし辛くさせている。これも周到
な計算によると思えるものだ。
共演は2019年9月22日題名紹介『オーバー・エベレスト 陰
謀の氷壁』などのチャン・ジンチュー。他にジョイス・フォ
ン、ジャック・カオ、リウ・カイチー、キャサリン・チャウ
らが脇を固めている。
脚本と監督は『インファナル・アフェア』シリーズの脚本を
手掛けたフェリックス・チョン。香港ノアールとは少し違う
けれど、舞台を世界に広げて正に現在の香港映画界の集大成
を思わせる作品になっている。
なお本作は、2019年香港電影金像獎で17部門にノミネートさ
れ、作品賞、監督賞など『インファナル・アフェア』と並ぶ
最多7部門を受賞した。
公開は2月7日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロー
ドショウとなる。

『ムルゲ 王朝の怪物』“물괴/物怪”
1997年にユネスコの「世界の記憶」(Memory of the World)
に登録された歴史書「朝鮮王朝実録」で、1527年の項に記載
されている怪物=物の怪の記述に基づき、当時の政治情勢な
どを加味して描かれた作品。
時代背景は李氏朝鮮の第11代国王中宗の頃。先王の燕山君は
暴君として名高いものだが、その後を継いで38年間在位した
中宗も王朝内の対立を原因とした粛清などの横行で世情不安
が絶えず、国を混乱に陥れていた。
そんな中宗の時代に、まずは疫病禍でその蔓延を防ぐため、
国王直属の内禁衛による民衆虐殺が敢行される。しかしその
作戦の最中、「民衆を守れないなら無力」と考えた将軍が反
旗を翻し、民衆の中から助けた幼子と共に王朝を去る。
それから年月が経ち同じ場所で物の怪の出現が伝えられる。
しかもその物の怪は疫病の元ともされた。そしてその陰で私
兵を囲う王朝の実力者の動きも顕著になる。この状況に国王
中宗は王朝を去った将軍の呼び戻しを画策するが…。
「朝鮮王朝実録」に記された「見聞不確かな怪異な生き物=
ムルゲ」は実在したのか? その謎を追って元将軍と実力者
の私兵、それに民衆の三つ巴の戦いが始まる。そしてそれは
恐ろしい事態へと展開して行く。
出演は、2018年5月紹介『V.I.P. 修羅の獣たち』などのキ
ム・ミョンミンと、2017年7月紹介『新感染 ファイナル・
エクスプレス』などのチェ・ウシク。それにK-POPグループ
“Girl's Day”のイ・ヘリ。
脚本と監督は、2015年『奴が嘲笑う』などのホ・ジョンホ。
フィルモグラフィに上がった作品はいずれも現代劇のようだ
が、本作では時代劇でさらにVFXも多用して物語を丁寧に
映像化していた。
因に本作は、2006年7月紹介『グエムル−漢江の怪物−』に
次いで韓国で大ヒットを記録したそうだ。
映画の前半ではムルゲの存在に疑問符が打たれ続けるが、い
ざそれが登場してからの展開は、正直に言ってポン・ジュノ
監督の作品に不満足だった僕には溜飲の下がる思いがしたも
のだ。
しかもその物の怪の出自は、思い充てれば1933年『キング・
コング』や1949年『猿人ジョー・ヤング』の裏返しであり、
さらにそこには燕山君の記録に残る史実も係るという、ほぼ
完璧な設定が施されている。これは見事だ。
公開は3月13日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ
ート心斎橋他で全国順次ロードショウとなる。

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01月19日(日)
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