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On the Production
by 井口健二
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■ふたりのJTL、スピリットOTA、イントゥTS(ジュディ、新卒ポモ、グッドバイ、ロングDJ、嘘八百2、初恋、架空OL日記、テリーGのDQ、屋根裏)
その兄は風力若しくは人力で空を飛ぶ機械を研究し、いつか
荒野の北に聳える壁を飛び越えて、その向こう側の世界に行
き着こうと考えていた。そこには豊かな暮らしを送れる社会
が待っていると信じて。
しかし妹は、荒野の一隅にある亡き父親の墓を守り、父親の
教えの通りに荒野に暮らし続けることを望んでいた。そして
兄との確執が妹の精神を蝕んでいるようでもあった。そんな
2人の生活に男が入り込む。
その男を兄は航空機のパイロットして訓練を開始し、誰かに
追われていると称する男もそれに応えて行くが、飛行の準備
が進む内に妹の病状はますます昂進してゆく。そして荒野を
進む人影も近づいてきた。
出演は、1998年プロイアス監督の『ダークシティ』にも出演
して後には製作者となるマイクル・レイクと、本作以外の映
画出演作は見当たらないライズ・デイヴィス、ノーマン・ボ
イド。俳優はほぼ無名の人たちによる作品だ。
監督はエジプト出身とのことだが、本作はオーストラリア製
作で、背景の荒野は『マッドマックス』を想起させるものに
なっている。ただしその世界を疾走するのは大型のバイクで
はなく、航空機の滑走という作品だ。
その航空機では凧のように風による揚力を利用するものと、
足漕ぎのプロペラで推進力を得るものの2種が登場し、その
間には風洞実験などいろいろな要件もあって、何と言うかそ
れなりの拘りもあって描かれているようだ。
しかしその割には最初5日間と言っていた期限が曖昧になる
など、展開には多少いい加減な部分も散見された。でもまあ
全体的にはしっかりと終末世界的な雰囲気はあり、それは好
ましく感じられる作品ではあった。
プロイアス監督のSF作品では、何と言っても『ダークシテ
ィ』の印象が強烈だったものだが、『キング・オブ・エジプ
ト』以降の新作の情報は途切れているようで、また鮮烈な作
品で復活して欲しいものだ。
公開は2020年2月8日より、東京は新宿シネマカリテ他にて
全国順次ロードショウとなる。
『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』
“The Aeronauts”
2016年11月紹介『ファンタスティック・ビースト』などのエ
ディ・レッドメインと、2017年4月紹介『怪物はささやく』
などのフェリシティ・ジョーンズの共演で、ヴィクトリア王
朝時代の1862年に気球で人類未踏の高度に挑んだ気象学者と
パイロットの姿を描いた作品。
気象学者は高空の大気の状態を調査することで気象の予報が
できると考えていたが、その調査をする方法や資金を見つけ
られていなかった。一方の気球パイロットは夫婦で挑んだ高
度記録への挑戦で夫を失い失意に浸っていたが、そこからの
立ち直りのため高度記録への再挑戦を考える。
そんな2人の目論見が合致した気球の挑戦にはスポンサーも
集まり、一世一代の興行として人々の注目を集めることにな
るが…。映画では高度記録に挑戦する気球の行程がほぼ実時
間で描かれ、そこに両名の過去の経緯などがフラッシュバッ
クで挿入される形式になっている。
共演は2019年8月紹介『イエスタデイ』などのヒメーシュ・
パテル。他に2016年9月18日題名紹介『アイ・イン・ザ・ス
カイ 世界一安全な戦場』などのフィービー・フォックス、
2013年1月紹介『カルテット!人生のオペラハウス』などの
トム・コートネイらが脇を固めている。
原案と脚本と製作総指揮は、2018年3月紹介『ワンダー 君
は太陽』などのジャック・ソーン。共同原案と監督をイギリ
スのテレビドラマを数多く手掛け、2014年『ウーマン・イン
・ブラック2』などのトム・ハーパーが担当している。
映画の巻頭には「実話からインスパイアされた物語」という
テロップが掲げられるが、実は科学史に残る記録では、到達
高度11277mは本作に描かれたものが唯一無二で、その記録は
今も破られていないのだそうだ。
しかしその際のパイロットは男性で本作のような未亡人は存
在していない。ただし当時のパイロットに女性がいたことは
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12月08日(日)
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