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On the Production
by 井口健二
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■ラスト・C、37セカ(母との、ロニートとE、ぼくらの、男と女、イーディ、ビッグ・LF、PMC、さよならTV、転がるB、ソン・L、ミッドS、前田)
そんな時、ふと手にしたアダルト雑誌の編集部に電話を掛け
た彼女は、編集長から「実体験の基づかない表現は、読者に
感動を与えられない」と言われてしまう。そこで夜の街にさ
迷い出た彼女の前に新たな世界が広がり始める。
企画、脚本、監督とプロデュースは、大阪出身でロサンゼル
スを拠点に活動し、短編では数多くの受賞歴を持つHIKARIの
長編デビュー作。企画はサンダンス映画祭とNHKが主宰の
脚本ワークショップに出品され、審査を経て実現された。
主演は、実際に車椅子生活を余儀なくされている100人以上
のオーディションから選ばれた佳山明。監督は当初は実績の
ある女優で撮影するつもりだったが、企画が動き出してから
考えを変え、全国の施設などに通知して選考を実施した。
共演は、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、車椅子の風俗店
評論家・熊篠慶彦。さらに萩原みのり、芋生悠、渋川清彦、
宇野祥平、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏ら
が脇を固めている。
健常者が脳性麻痺の人物を演じる作品では、池脇千鶴主演の
2003年10月紹介『ジョゼと虎と魚たち』や、ムン・ソリ主演
の2004年1月紹介『Oasis』などが思い浮かぶが、それ
らが描いた悲壮感に比べると、時代も変わったと感じる。
とは言いながら依然として差別があることも事実な訳で、本
作はそれらが巧みに描き出されたとも言えるものだ。それに
してもオーディションで選出とは言っても素人の出演者から
ここまでの演技を引き出した手腕にも敬服する。
その一方で本作のタイトルは主演の佳山明の現実に基づくも
のだそうで、映画後半の心情を吐露するシーンなどは、彼女
が選ばれたことで起きた見事な相乗効果と言えるものだ。そ
れを掴み出せたことも素晴らしい。
公開は2020年2月7日より、東京は新宿ピカデリー他にて全
国ロードショウとなる。
この週は他に
『母との約束、250通の手紙』“La promesse de l'aube”
(フランス外務省に勤務して各国の大使館参事官や領事など
を務め、その後に作家となって2度のゴンクール賞を受賞。
さらにジーン・セバーグと結婚して映画監督なども手掛けた
ロマン・ガリの生涯を描いた作品。現在のリトアニアに生ま
れ、14歳の時に母子でフランスのニースに移住。そんな母親
は息子が幼い頃から「お前は大使になり、作家になる」と言
い続ける。それは軍役などで家を離れても母親は手紙で息子
を励まし続けた。そして息子は母の言葉を天啓のように人生
を歩むが…。強烈な親子愛の物語。出演は2014年6月15日付
「フランス映画祭2014」で紹介『イヴ・サンローラン』など
のピエール・ニネと、2018年8月5日題名紹介『嘘はフィク
サーのはじまり』などのシャルロット・ゲンズブール。ガリ
の原作に基づく脚本と監督は2014年“Le dernier diamant”
などのエリック・バルビエ。公開は2020年1月31日より、東
京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)
『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』“Disobedience”
(2017年12月24日題名紹介『ナチュラルウーマン』でベルリ
ン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)を受賞、オスカー外国語映画賞
にも輝いたチリ出身セバスチャン・レリオ監督が、レイチェ
ル・ワイズ&マクアダムスをW主演に迎えて、イギリスの女
流作家ナオミ・オルダーマンの自伝的デビュー作を映画化。
厳格な正統派ユダヤ人社会に育った女性2人は互いに惹かれ
合うが社会に受け入れられず、1人は信仰とユダヤ教指導者
の父を捨てて故郷を離れる。そしてもう1人は閉鎖的社会の
中で結婚し生きてきたが…。指導者の死で娘が帰郷し、次期
指導者になる夫との間で関係が揺れ動く。部外者の目で、こ
こまでくるとユダヤ教もカルトだなという思いもする。まあ
他人の信仰に口を挿む気はないが、監督は前作でもトランス
ジェンダーを扱って、性的マイノリティへの思い入れは深い
ようだ。公開は2020年2月7日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)
『ぼくらの7日間戦争』
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12月02日(月)
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