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On the Production
by 井口健二
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■ドクター・S(時の行路、廓文章、盗まれたC、ロマンスD、プリズン・C、みぽりん、愛国者に、インディペンデント・L、スウィング・K、his)
ノービの雰囲気も漂ってしまうもので、そこで結末にはマク
レガーと黒人男性2人が並ぶ映像も思いついたが、フラナガ
ン監督はそこまでの悪乗りは控えたようだ。
公開は11月29日より、2019年9月29日題名紹介『IT イット
THE END』に続いての全国ロードショウとなる。

この週は他に
『時の行路』
(2008年に起きたリーマン・ショックでの派遣切りを争点と
する労働争議の実話に基づく田島一著による小説の映画化。
2010年12月紹介『学校をつくろう』などの神山征二郎監督の
第30回作品。青森出身で長年大手自動車メーカーに派遣工員
として働いていた主人公が、息子の大学進学が決まった矢先
に会社の業績不振を理由とした解雇を言い渡され、その不当
性を追求するため労働組合に加入、さらに裁判を戦って行く
姿が描かれる。出演は石黒賢、中山忍。他に新人の松尾潤、
村田さくら。また川上麻衣子、綿引勝彦、渡辺大、安藤一夫
らが脇を固め、日色ともゑがナレーションを担当している。
これが現実(実話)だから仕方ないが、何ともやるせない物語
が繰り広げられる。企業と結託する日本の司法の姿には観終
えて胸に滾るものもあったが、「もっと怒れ」というのが制
作者の直なメッセージだろう。公開は一般映画館ではなく、
上映有限責任事業組合により全国各地で行われるようだ。)

『シネマ歌舞伎・廓文章 𠮷田屋』
(2019年9月1日題名紹介『女殺油地獄』に続くシネマ歌舞
伎の第35弾。上方歌舞伎の代表作ともされる演目を十五代目
片岡仁左衛門と五代目坂東玉三郎共演により、平成21年4月
「歌舞伎座さよなら公演」にて収録。傾城夕霧に入れあげて
勘当された大店の若旦那と、茶屋の主夫妻、それに夕霧との
やり取りが上方の「和事」で演じられる。巻頭には仁左衛門
の解説が付けられ、江戸歌舞伎の「荒事」との差異なども説
明される。また仁左衛門と玉三郎との50年余の交流なども語
られ、ファンにはたまらない特典映像と言えそうだ。なお題
名は映像中のタイトルも「吉」になっているものだが、僕は
劇中の暖簾の表記に合わせて標記の文字を使わせてもらう。
なお本作の収録は4月の公演からのものだが、内容では店先
に門松があるなど正しく正月の話で、今回はぴったりの時期
での公開と言える。その公開は2020年1月3日より、東京は
築地の東劇他で全国ロードショウ。)

『盗まれたカラヴァッジョ』“Una storia senza nome”
(紙幣の肖像画にもなっているイタリア人の画家が1609年に
描き、1969年に盗まれたまま行方不明になっている名画を巡
るミステリー。先に登場するのは男性の脚本家。しかし彼の
才能は枯渇しており、実際に執筆しているのは彼の愛人の女
性だった。そんな彼女もアイデアは尽きかけていたのだが、
新作の要望に思いあぐねている時に町で遭った老人からアイ
デアを貰う。それは盗まれた名画の変遷を辿るものだった。
ところが脚本の一部が流出し、その内容を巡ってマフィアが
動き出す…。この名画の盗難を巡ってはいろいろな怪情報も
あるようで、物語はそれらを織り込みながら巧みに展開され
て行く。まあ当事国民でない我々には多少判り難い面もある
が、全体は歴史を背景にした謎解きとして面白く描かれてい
た。監督は2017年12月31日題名紹介『修道士は沈黙する』な
どのロベルト・アンドー。公開は2020年1月17日より、東京
はYEBISU GARDEN CINEMA他で全国順次ロードショウ。)

『ロマンスドール』
(2016年9月11日題名紹介『お父さんと伊藤さん』などのタ
ナダユキ監督が2008年に発表した自作小説を映画化。美大を
出たもののフリーターだった主人公が先輩の紹介でアダルト
向けの造形師として働きだす。そこで究極のラヴドールの開
発に関るが、実際の女性から型取りをするため、医療用と称
して美術モデルを斡旋して貰う。ところがその女性を好きに
なった主人公は、嘘を隠したまま交際を始め、結婚に漕ぎ着
けるが…。互に秘密を持ったまま続けた夫婦生活にある衝撃

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11月24日(日)
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