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On the Production
by 井口健二
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■おそ松さん、誰がために憲法は(ベトナムを懐う、桜の森の満開、アメリカン・A、バイス、シベリアからの、リアム16歳、JK☆ROCK、4月の君)
でも歓迎されていた公演が、最近はなかなか迎えられない状
況もあるようだ。
そんな中での広島での公演の模様が記録されている。そこに
は地元の生徒たちも一緒に舞台に上がり、朗読の一部に参加
するという演出もなされていた。そして公演後の懇談会では
生徒たちの思いも伝えられる。
さらに本作では、渡辺が朗読劇を立ち上げるに至った背景も
語られており、そこには天の配材とも言える衝撃の物語も描
かれる。それは2016年5月29日題名紹介『いしぶみ』にも繋
がる特別なものだった。
朗読劇への参加者は高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本
多代、日色ともゑ、長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋
芳枝。本作は、2013年『戦争と一人の女』などの井上淳一監
督による。
実は僕は、偶然この作品の初号試写に立ち会うことができた
もので、その会場には出演の女優たちも多数来場していた。
その中で挨拶に立った渡辺は、別作品である『憲法くん』と
の合体の是非を心配していた。
それは確かに構成は二元的ではあるが、テーマは通底してい
るものであり、僕はこの構成でも理解はされると思ったもの
だ。ただしできることなら『憲法くん』も併映して貰えたら
とは考えた。
最近映画界でもいろいろあって、かなりきな臭い雰囲気が漂
う中で、このような作品がしっかりと上映されてゆくことが
重要だと思えるものだ。
公開は4月27日より、東京はポレポレ東中野他にて全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『ベトナムを懐う』“Dạ cổ hoài lang”
(1994年の初演からベトナム各地で再演されてきたという舞
台劇の映画化。1995年冬のニューヨークを背景に、異国に暮
らす三世代のベトナム人の姿を描く。主人公は先に母国を離
れた息子を追って渡米した老いた男性。すでに老人ホームに
入っているが、妻の命日を家族と共に過ごそうと息子の家に
やってくる。ところがそこにいたアメリカ生まれの孫娘は祖
母のことなど知る由もなかった。そしてその2人の対立が始
まるが…。三世代の中では息子の境遇が一番大変だったはず
だが、荒海を行く小舟の特撮シーンなどはあるものの肝心な
点には触れず、ただ望郷とそこに思い至れない孫娘の姿だけ
が強調される。それがベトナム人に受けたのは判るが、配慮
かなあとも考えてしまうところだった。監督は商業的な映画
を多く撮っているグエン・クァン・ズン。公開は2019年1月
27日題名紹介『漂うがごとく』と共に3月23日より、東京は
新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『シネマ歌舞伎・野田版 桜の森の満開の下』
(坂口安吾の短編小説「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳
男」をベースとする野田秀樹の戯曲「贋作 桜の森の満開の
下」を基に、野田と十八世中村勘三郎が歌舞伎の舞台として
企画。しかし2012年に急逝した中村の遺志を継いだ野田が、
2017年に自身の演出により上演した舞台からの作品。主人公
の耳男は仏師の師匠と共に飛騨の里に向かう途中、満開の桜
の森で師匠を殺害してしまう。しかし師匠と間違われて城に
迎えられた耳男は、夜長姫の求めに応じた仏像を彫ることに
なるが…。やがてそれが国家を揺るがす大事へと発展する。
物語はどちらかというと「夜長姫」に寄ったものだが、それ
にしてもその壮大なスケールには圧倒された。しかもそれが
歌舞伎の舞台に見事にマッチしていることにも感動した。た
だ音楽に関してはやはり邦楽で聴きたかったかな。洋楽は何
かしっくりこなかった。公開は4月5日より、東京は東劇、
新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『アメリカン・アニマルズ』“American Animals”
(ケンタッキー州レキシントンのトランシルヴェニア大学で
2004年に起きた強盗事件の顛末を描いた実話の映画化。主人
公は平凡な生活に飽きた学生。そんな彼が目にしたのは、大
学図書館の特別室に置かれた希少本。時価1200万ドルとされ
るその本を盗み出せば人生を変えられる。狙いの本はジョン

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02月17日(日)
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