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On the Production
by 井口健二
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■SUKITA 刻まれたアーティストたち(ベルリン・S、蝶の眠り、ラスト・W、北斎、獄友、ラッカ、ボストン S、スクエア、ダリダ、港町)
7日より、東京は新宿武蔵野館他で全国ロードショウ。)

『蝶の眠り』
(中山美穂がアルツハイマーに侵された女性作家役で5年ぶ
りの映画主演を果たした作品。自らの病を知った作家は「魂
の死」を迎える前に何かをやり遂げようと大学での講義を始
めるが…。学園近くの居酒屋で働く韓国からの留学生と知り
合った彼女は仕事の手伝いを頼むようになり、2人は徐々に
惹かれ合って行く。共演は2009年1月紹介『アンティーク
西洋骨董洋菓子店』などのキム・ジェウク。他に石橋杏奈、
勝村政信、菅田俊らが脇を固めている。脚本と監督は2004年
『子猫をお願い』などのチョン・ジェウン。物語はフランス
の女流作家マルグリット・デュラスの晩年を描いたジャンヌ
・モロー主演映画を元にしているようだが、題名は赤ん坊が
両手を挙げて寝る姿を指す言葉だそうで、劇中にはこの他に
も様々な素敵な言葉が散りばめられている。公開は5月12日
より、東京は角川シネマ新宿他で全国ロードショウ。)

『ラスト・ワルツ』“The Last Waltz”
(1976年にサンフランシスコで行われた「ザ・バンド」の解
散ライブの模様を、その舞台演出も手掛けた当時は新進気鋭
のマーティン・スコセッシ監督が映像化。その作品がディジ
タルリマスターにより公開される。出演はザ・バンドの他、
ゲストにはエリック・クラプトン、ニール・ヤング、ジョニ
・ミッチェル、ニール・ダイアモンド、リンゴ・スター、ボ
ブ・ディランら錚々たる顔触れが登場。特にディランは、以
前にザ・バンドのバックを務めていたという経緯だそうで、
後のノーベル賞受賞者の若い姿も感動だ。また撮影にはマイ
クル・チャップマン撮影監督以下、ラズロ・コバックス、デ
ヴィッド・マイヤーズ、ボビー・バーン、マイクル・ワトキ
ンス、ヒロ・ナリタら、こちらも錚々たるメムバーが揃って
いるのも見逃せない。公開は4月14日より、東京はヒューマ
ントラストシネマ渋谷他で全国順次ロードショウ。)

『大英博物館プレゼンツ 北斎』
          “Hokusai: Old Man Crazy to Paint”
(2017年5〜8月にロンドン大英博物館で開催された展覧会
「Hokusai: Beyond the Great Wave」の様子を中心に江戸時
代の浮世絵師の全貌に迫ったイギリス製ドキュメンタリー。
北斎というと、まずは「富嶽三十六景」が思い浮かぶが、本
作はその版画の制作過程の紹介などと共に、彼の肉筆画にも
焦点を当て、さらには90歳まで描き続けた絵師の生涯など、
絵師の全体像を描き尽す。そして後半では、大英博物館での
展示が、美術史家や現代のアーティストらの解説と共に詳細
に映し出され、美術館のガイドツアーとしても楽しめる構成
になっている。監督は以前にも大英博物館関連のドキュメン
タリーでプロデューサーを務めているパトリシア・ウィート
リー。本作は美術館展示の紹介だけでなく、そこからの広が
りを見事に描いた巧みな作品だ。公開は3月24日より、東京
はYEBISU GARDEN CINEMA他で全国順次ロードショウ。)

『獄友』
(2014年『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』と、2016年
『袴田巖 夢の間の世の中』の金聖雄監督が三度追った冤罪
事件のドキュメンタリー。狭山事件の発生は1963年、袴田事
件は1966年だが、本作ではさらに1967年の布川事件、1990年
の足利事件が取り上げられ、彼らが服役中に一緒だった時期
があることから獄友と称して交流する姿が描かれている。但
し布川・足利の両事件は共に無期懲役の判決であり、再審で
無罪が確定しているものだが、袴田・狭山は死刑判決で、さ
らに未確定あることが際立っている。そんな状況での作品だ
が、特に袴田氏の姿に、死刑囚という極限状態での精神的圧
迫の恐ろしさが如実に著されている。正に冤罪の恐怖、それ
は誰にでも降り掛る可能性のあるものという恐怖が重く感じ
られる作品だ。公開は3月24日より、東京はポレポレ東中野
他で全国順次ロードショウ。)

『ラッカは静かに虐殺されている』“City of Ghosts”

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03月04日(日)
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