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On the Production
by 井口健二
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■見栄を張る、ワンダーストラック、空海(花は咲くか、名前のない、悪女、神さまの轍、リメンバー・ミー、ラブレス、かぞくへ、ROKUROKU)
ェグリーと、全米でのオーディションで選ばれたミリセント
・シモンズ。他に監督とは3度目のコラボレーションのジュ
リアン・モーア、2013年2月紹介『オズ はじまりの戦い』
などのミシェル・ウィリアムスらが脇を固めている。
始めの方で、映画館の前にサウンド映画の宣伝が大量に掲げ
られたシーンが登場する。それはその時代を現しているよう
にも見えるが、観客はその後で主人公の境遇を知りショック
を受けることになる。その巧みな展開が上手さを感じさせる
作品でもある。
そしてその境遇を生き抜くことの難しさが、後の時代の主人
公を後天的にその境遇とすることで観客にも判り易く表現さ
れる。この辺りの描き方には、過去の作品でもマイノリティ
の気持ちに沿うような映画作りをしてきた監督の温かさが伝
わってくるものだ。
そんな全ての人に優しさを教えるような作品だが、同時に原
作者のサイレント映画への愛情も描き尽す。それは2011年の
作品でジョルジュ・メリエスに捧げられた想いが、本作でも
見事に描かれている。時代の流れには逆らえないものだが、
その良さもしっかりと伝えている。
サイレントからサウンドへ、そして映画の歴史の全てに捧げ
られた作品と言えそうだ。
公開は4月6日より、東京は角川シネマ有楽町、新宿ピカデ
リー他で全国ロードショウとなる。
『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』“妖描伝”
2016年『神々の山嶺』などの夢枕獏原作「沙門空海唐の国に
て鬼と宴す」を、2011年11月紹介『運命の子』などのチェン
・カイコーの脚本、監督で描いた作品。
時は西暦805年、遣唐使の僧として長安に暮らす空海の許に
皇帝が病に伏したことでの祈祷の依頼が来る。しかし空海の
祈祷は及ばず、空海はその陰に強い呪術の存在を感じ取る。
そこで、その現場で知り合った宮廷官吏の白楽天と共にその
背後に潜む謎を調べ始めるが…。
そこには玄宗皇帝と楊貴妃の時代から3代に亙っての幻術に
塗れた愛憎の物語が隠されていた。そして事件は、50年前か
ら長安で暮らす阿倍仲麻呂らも巻き込んで、壮大な物語へと
広がって行く。それらが当時世界最大の都市とされる長安の
景観や、華麗な幻術などのVFXと共に描かれる。
出演は、2017年1月紹介『3月のライオン』などの染谷将太
と、2017年2月紹介『グレート・ウォール』などのホアン・
シュアン。それに『神々の山嶺』などの阿部寛。他に松坂慶
子、火野正平。
さらに2017年11月12日題名紹介『52Hzのラヴソング』などの
チャン・ロンロン。またオウ・ハウ、リウ・ハオラン、チャ
ン・ルーイー、チャン・ティエンアイ、チン・ハオ、キティ
・チャンら、中国映画の錚々たる顔ぶれが脇を固めている。
実は試写の前に、特に年配の評論家の評価が低いという噂を
聞いていた。それはまあこの種のVFX多用の作品にはよく
あることではあったが、チェン・カイコー監督の作品という
ことではちょっと気になった。
それで映画を観始めたが、まず気になったのは日本語吹き替
えの口元が余り合っていないという点だった。これは韓流ド
ラマの吹き替えなどでもよく感じるが、西欧人の吹き替えで
は生じない違和感が東洋人の時には感じられてしまう。
したがってこれは韓流ドラマなどを観馴れている人には問題
ないのかな、とも思えたところだった。
そして次に気になったのは、邦題の『空海』というのが映画
の物語に合っているか? という点だ。これは夢枕獏の原作
の題名も「沙門空海」ではあるが、映画は中国題名の『妖描
伝』の方がより的確のように感じられる。
特に本作は、空海本人の宗教的な業績を描くものではなく、
単に空海は事件を解決する探偵であって、『八つ墓村』にお
ける金田一耕助のような存在なのだ。従ってこれを『空海』
と題したことに違和感が生じる。
ただしこれを中国題名のように「猫」の物語として観れば、
特に後半の活躍ぶりなどには、思わず感動してしまうところ
もある作品で、猫好きにはたまらない作品とも言えそうだ。
そう思いながら観ることをお勧めしたい。
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01月21日(日)
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