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On the Production
by 井口健二
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■ゆれる人魚
(2013年の長編デビュー作『めぐり逢わせのお弁当』が世界
的なヒットとなったインド映画の監督リテーシュ・パトラに
よる第2作は、イギリスでブッカー賞受賞作の映画化となっ
た。主人公は、年金暮らしで小さな中古カメラ店を営む高齢
の男性。弁護士の妻とは別居だが、今でも相談の出来る友人
として付き合っている。そんな彼の許にある女性の遺品を送
るとの手紙が届く。それは彼の学生時代の友人の日記帳だと
いうのだが…。それが彼の秘めた記憶を呼び起こす。出演は
ジム・ブロードベント、ハリエット・ウォルター、エミリー
・モーティマー、そしてシャーロット・ランプリング。名優
たちが見事なドラマを織り上げる。公開は2018年1月26日よ
り、東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『ロシア・アニメーション特集』
(「ロシアンシーズンズジャパン2017」の一環で上映された
もので、2013年12月紹介『ミトン』及び人気者のチェブラー
シカ初登場となった『ワニのゲーナ』のリマスター版と、同
作を生んだ「ソユーズムリトフィルム」の新作短編5本が上
映された。旧作は共に人形アニメーションだが、新作のテク
ニックは多岐に亙っており、内容も実験的なものもあってい
ろいろな模索が行われているようだ。そして上映に先立って
行われたトークショウでは、これらの作品では各国の映画祭
での受賞もしているとのこと。先に紹介している韓国や中国
なども含めて世界のアニメーション事情もいろいろ変化して
いるようだ。作品は大人も楽しめるものだったが、残念なが
ら一般公開は予定されていない。)
『泳ぎすぎた夜』
(1981年フランス生まれのダミアン・マニヴェルと、1983年
静岡県生まれの五十嵐耕平。すでに映画祭での受賞歴もある
2人が、冬の青森県を舞台に共同監督した作品。描かれるの
は6歳の少年。魚市場に向かう父親が早朝に出掛けた後、ふ
と目覚めた少年は海で泳ぐ魚の絵を描き始める。そして眠ら
ぬまま学校に向った少年は登校せず、列車に乗って冒険に飛
び出す。フィクションとしては面白い。ただ自分が子育てを
終えた親としては、この種の作品は親の気持ちになって落ち
着けなくなってしまう。本作はドキュメンタリーではないの
だから、その辺は割り切って観るべきなのだろうが…。公開
は2018年3月下旬より、東京は渋谷のシアター・イメージフ
ォーラム他にて全国順次ロードショウ。)
『ボリショイ』“Большой”
(「ロシアンシーズンズジャパン2017」の一環で上映された
作品。ソビエト連邦の時代から幾多の来日公演も行われてい
るボリショイバレエ団を背景にしたドラマ。主人公は貧しい
環境の生まれ、しかしダンスの天分を持ち、憧れだったボリ
ショイ劇場のバレエアカデミーに入学を許されるが…。ライ
ヴァルでもある親友や、トラブルの引き金になる老教師など
正しくメロドラマという物語が展開される。監督は、1989年
『令嬢ターニヤ』の監督を父に持つワレーリー・トドロフス
キー。撮影はボリショイ劇場の全面協力の許に行われ、中心
になる2人には共に現役のバレリーナが扮して、主人公らの
パフォーマンスも素晴らしい作品。日本公開を実現して欲し
い作品だ。)
『スリープレス・ナイト』“Sleepless”
(2012年6月10日「フランス映画祭2012」で紹介した“Nuit
blanche”のハリウッドリメイク版。前の紹介でフランス映
画らしさもあると書いたのが何処か忘れたが、本作は見事に
ハリウッド映画化されている。舞台はラスヴェガス。そこで
麻薬の強奪事件が起きる。その犯人は在ろうことか地元の警
察官だったが…。主人公の息子が拉致され、麻薬の奪還を求
められるなど、物語の大筋は同じだが、ラスヴェガスという
風景だけでリアリティが湧くというか、これは有だという雰
囲気が漂う。出演はジェイミー・フォックス、ミシェル・モ
ナハン。監督は2014年『ピエロがお前を嘲笑う』でブレイク
したスイス人のバラン・ボー・オダー。結末が違ったかな。
公開は2018年2月3日より、全国ロードショウ。)

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12月17日(日)
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