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On the Production
by 井口健二
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■Infini-T Force(インフィニティ・フォース)、ドリーム、ギフテッド
ようだ。
物語の背景は、1984年の映画『ライトスタッフ』にも描かれ
た米国の宇宙開発計画初期の頃。ソ連邦の有人宇宙飛行成功
を受けて1958年に創設されたNASA(航空宇宙局)では、
独自の有人宇宙飛行の研究開発が進められていた。
そんな中、バージニア州にあるNASAのラングレー研究所
に、飛行軌道の策定などロケットの打ち上げに必要不可欠な
計算を行う黒人女性グループがいた。彼女らの職務は、別棟
から届く計算の検算などを行うこと。
そのグループから数学の天分をもつキャサリン・ジョンスン
が才能を認められて、別棟にある宇宙特別研究本部の計算係
に抜てきされる。しかしそこは完全な男性社会で、しかも施
設などに黒人蔑視の風潮が色濃く残っていた。
一方、IBM社から納入された新開発のコンピューターは、
その能力は期待されていたものの前提となるプログラミング
が面倒で、研究者からは敬遠されていた。その習得にグルー
プの1人のドロシー・ボーンが挑む。
斯くして彼女らの活躍が、アメリカ初の有人宇宙飛行の実現
に向けて力を発揮して行くのだが…。
出演は、2008年12月紹介『ベンジャミン・バトン−数奇な人
生−』などのタラジ・P・ヘンスン、2017年5月紹介『ダイ
バージェント』などのオクタヴィア・スペンサーと、2017年
2月5日題名紹介『ムーンライト』などのジャネール・モネ
イ。
他に、ケビン・コスナー、キルステン・ダンストらが脇を固
めている。
原作者のマーゴー・リー・シェッタリーは、金融やメディア
企業の設立業務に携わってきたという経歴を持つ黒人女性。
本作は彼女が年月を掛けて調査し、2016年に初めて上梓した
ノンフィクションで、その原題には、“The Story of the
African-American Women Who Helped Win the Space Race”
という副題が付けられているものだ。
実際に映画の最後には、登場する3人がNSNAから特別顕
彰されたという報告も付されているが、それは2015年になっ
てからのことで、正に原題通りの「隠された人々」だったよ
うだ。それにしても、まさかあのNASAが…と言いたくな
るような内容だが、それがアメリカの現実だったということ
なのだろう。その根深さを描いた作品でもある。
とは言え、本作は宇宙開発初期のNASAの苦闘を描いた作
品でもあって、その部分は『ライトスタッフ』とは別の視点
で興味深く見られるものだ。2014年11月紹介『ガガーリン』
でも驚かされたが、それにも勝るNASAの事情が描かれて
いる。
ところで、本作でも引用されるケネディ大統領の演説だが、
その中で“in this decade”というくだりが「10年以内に」
と訳されている。これは当時の新聞報道などでもそうなって
いたもので、本作に字幕でもそれを踏襲しているのだが。
この演説が行われたのは1962年のことで、その10年以内では
1972年まで猶予があることになる。しかしアポロ11号の月面
着陸は、1969年に敢行された。
ここでdecadeという単語には、10年間という意味と同時に、
centuryやmillenniumと同じ、暦上の期間を現しているよう
にも感じるので、それなら「10年以内」ではなく「1960年代
の内に」と訳す方が良いように思える。字幕は誤訳ではない
けど指摘しておきたいものだ。
公開は9月29日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他にて、
全国ロードショウとなる。
『gifted ギフテッド』“Gifted”
『アベンジャーズ』でキャプテン・アメリカを演じるクリス
・エヴァンスが、姉の忘れ形見の幼い姪を育てる男性に扮し
たヒューマンドラマ。
物語としては上記の括りとなるが、その実態はかなり変わっ
ている。実は亡くなった姉というのが数学の天才で、未証明
の命題に取り組んでいたものの突然自死したという。しかも
その娘も幼い頃から数学の天分を見せ始める。そこでその子
にも母親の跡を継ぐ道が示されるが…。
前記の『ドリーム』も言ってみれば数学者の話だが、2002年
3月紹介『ビューティフル・マインド』でラッセル・クロウ
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09月03日(日)
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